企業の未来を象徴するブランド
ミツカンは2019年3月5日、同社初のD2Cブランド「ZENB(ゼンブ)」をローンチした。コンセプトは、「『食べる』のぜんぶを、新しく。」。商品開発の段階からデザイン面に力を入れ、売上も昨年比8倍と成長している。国内外で商品を展開するミツカンはなぜD2Cのブランドを立ち上げたのだろうか。
ユーザーの心を動かす D2Cブランドのデザイン戦略
椎茸を使っただしなどを販売する「椎茸祭」(しいたけまつり)。菌種と農家を厳選した原木椎茸と、植物性の原料のみを使用するなどこだわり抜いた商品のみを提供してきた。“平和”と“調和”を表現しているというパッケージデザインも内製し、2017年の設立以来ファンを増やしてきた。
椎茸祭 代表取締役 竹村賢人さんは、NTTコミュニケーションズを経て、インドでプログラマーとして就職。そして帰国後チームラボに入社し、2017年に椎茸祭を設立したという経歴の持ち主。椎茸だしを中心に事業を展開する椎茸祭だが、その根底には、「息抜きによって世界をやさしく保つ」というミッションがある。
「会社を設立するときに“世界平和”という課題を解決したいと決めていました。それを実現するために大切だと僕が考えているのが、『自分の心が穏やかであること=自分平和』です。そして、その自分平和のためには、リラックス、息抜きが必要だと思うんです。前職のチームラボでは、アートという非日常の息抜きを提供してきました。今度は衣食住という日常、生活習慣の中から息抜きを提供できればと。そうして思いついたのが、インドに住んでいた頃に恋しかった“お風呂”と“だし”でした」と竹村さんは話す。
“だし”といっても多種多様な種類がある。しかし、かつお、煮干しなどの動物性のだしは、宗教や思想信条で好まない人も多く、より多くの人に飲んでもらえるのは、植物性のだし。「仲間外れを減らそう。みんな仲良く食べよう。」というポリシーには、後者がふさわしい。その中でも、椎茸は鎌倉時代に道元が著した『典座教訓』が初出との一説があり、室町時代には足利義政に献上されていたとされる伝統的な日本の食材だ。その人工栽培も約400年前の江戸時代に日本人が始めたという。そんな椎茸の価値を日本の文化とともに発信できればと、椎茸だしのアイデアが生まれた。
「世界平和を実現するためには、息抜きが必要、その息抜きのためには椎茸だしが良いという発想です。あくまで世界平和が事業の起点にあります」(竹村さん)。
主力商品である「oh! dashi」は、8グラムずつスティックに入った濃縮タイプの液体だし。150ミリリットルのお湯を注ぐと、温かいだしが完成する。もちろん料理にも使用可能だ。現在は、椎茸と昆布の...