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コンセプトからヒットを生む 広告と商品デザイン

ブランドの想いと商品の機能を伝える 圧倒的に新しい洗剤の広告

花王「アタックZERO」

花王が2019年4月1日に発売した「アタックZERO」。松坂桃李さん、菅田将暉さん、賀来賢人さん、間宮祥太朗さん、杉野遥亮さんという5人の人気俳優で結成された「#洗濯愛してる会」の広告でセンセーショナルなデビューを飾った。売上も好調で、衣料用洗剤市場における花王のシェアを拡大している。

CONCEPT

洗剤の新しい王道をつくる

(左から)「アタックZERO(ゼロ)レギュラー[ボトル]」「アタックZERO(ゼロ)レギュラー[ワンハンドタイプ]」「アタックZERO(ゼロ)ドラム式専用[ボトル]」「アタックZERO(ゼロ)ドラム式専用[ワンハンドタイプ]」。

改めて洗剤の役割を考え直し見つけたど真ん中の価値

「そもそも洗剤の役割ってなんだろうというところから商品コンセプト開発は始まりました」と花王 作成部門 広告作成部 広告作成部長 簑部敏彦さん。

「研究所、事業部のマーケター、インハウスのクリエイティブチームなど商品に関わる社内の担当部署で集まり、ワークショップを何度も行いました。案を出しつくした上で、至ったのが『ゼロにする』というコンセプト。いろいろな機能が登場し、生活者も選びづらくなる中で、いかにそぎ落とした表現にできるか。1987年の発売以来、洗濯用洗剤のトップシェアの一角を30年以上走り続けるブランドとして、洗剤のど真ん中の価値で、王道をいく存在を目指しています」。

そして、このコンセプトがそのまま商品名の「アタックZERO」に。この“ZERO”には「落ちにくい汚れ0へ」「生乾き臭0へ」「洗剤残り0へ」の3本の軸がある。それをまとめるのが、「ゼロ洗浄へ」という言葉だ。研究所の開発力でもちろん機能は向上しているが、「汚れが落ちる」というのは、あらゆる洗剤ブランドがうたっていること。「ゼロ洗浄へ」という王道の価値をいかにこれまでと違うものとして伝えられるか。それは、競合との戦いでもあり、アタックが築いてきた洗剤の歴史との戦いでもあった。「『ゼロ洗浄』という新たな洗剤の市場をつくる。そんな気概でいました」(簑部さん)。

このコンセプトを生活者にも伝えるべく、コミュニケーション戦略を電通のクリエイティブチームと共に考えていった。

王道をアップデートする

電通 クリエーティブディレクター/CMプランナー 鈴木晋太郎さんは、「オリエンテーションを聞いて、大きく2つのことを考えました。1つ目は、簑部さんの言葉と重なりますが、いかに王道をアップデートするかということ。洗剤広告の歴史は言い換えると、『白くなる』『におわない』をいかにすごそうに言うか、見せるかを研究してきた歴史であったように思います。その中で『圧倒的に新しいど真ん中の洗剤が出た』と思ってもらうためには、洗剤の広告として圧倒的に新しくなくてはいけない。一目見たときは、洗剤の広告と気づかない。そんな表現を目指しました。2つ目は、ゼロ洗浄に内包される複数のメリットを伝える枠組みが必要ということでした」と話す。

これらを軸に、電通のチームで企画を考えている中で、アートディレクター 嶋田真之介さんが持ってきたのが、“イケメン5人”が並んだカンプだったという。「それを見た瞬間、チームの全員が『あ、これなんじゃない』と。その5人が洗濯好きだったら、今までにない広告ができるかもしれないと思い、キャラクター設定とキャスティングを考え始めました」(鈴木さん)。

実は、企画の方針が決まった当初は「#ゼロ洗浄の会」「#ゼロ会」といった名前だったという。しかし...

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