パッケージデザインの変更などのブランドリニューアルにあたり、賛否の声が届きやすくなっている今。コンセプトを踏まえたデザインを実現するためのポイントとは。590万人の消費者のデータを基にしたAIによるパッケージの評価システムなどのデータから、食品メーカー出身で日本パッケージデザイン協会理事の小川亮さんが解説する。
なぜローソンのPBは議論を呼んだのか
2020年春、ローソンのプライベートブランド(PB)の刷新にあたり、新たなパッケージデザインが物議を醸した。
AIを使ったパッケージデザインの評価システムを提供するプラグ 代表取締役 小川亮さんはローソンのPBが注目を集めた理由として、「広告と同じように、商品のパッケージにも社会性が求められるようになってきています。コンビニは高齢者の方も利用していますし、わかりやすい商品説明がパッケージに求められます。多くの人がわかりやすく、使いやすくあるべきだという“アクセシブルデザイン”の概念がパッケージにも広がってきているということです。ローソンのPBデザインの賛否両論は、コンビニとパッケージが共に社会性が求められているという背景が根本にあるように思えます」と指摘する。
プラグが持つシステムでは、パッケージデザインに対する好意度のほか、「おいしそう」「かわいい」「シンプル」「デザイン要素がよい(必要な情報がわかりやすく表示されている)」「なつかしい」「やさしい」「安心感・信頼感がある」「効果・効能を感じる」「新しい・ユニーク」といった19種のイメージごとに評価できる仕組みとなっている。その根拠となっているのは、消費者590万人によるパッケージデザインに関する評価を集めた学習データだ。
ローソンと競合のPBのパッケージについてAIで評価を算出したところ、好意度と共に「おいしそう」「かわいい」「デザイン要素がよい」といったイメージについて、競合のPBの方が高い傾向にあることがわかった。一方で「シンプル」というイメージについては、ローソンのPBの方が高い。
「AIを用いると、時間・コストのかかる対面調査と比べ、短期間・低コストでデザイン開発のPDCAサイクルを何度でも回すことができる」と小川さんはメリットを説明する。
「ブランドコンセプト」が成否を決める
小川さんによると、パッケージデザインには5つの欠かせない要素がある(図1)。デザインのリニューアルで失敗しているケースでは...