「世界初のクラフトコーラ専門メーカー」をうたう、伊良(いよし)コーラ。2018年7月に初めて青山ファーマーズマーケットに出店。その後百貨店などに進出、今年2月28日には東京都内に第1号店「伊良コーラ総本店下落合」をオープンするなど事業を広げている。
CONCEPT
自分の“ワクワク”を商品にする。
和漢方職人の祖父の資料や道具がブレイクスルーのきっかけ
「伊良コーラは、自分が好きでつくりはじめたコーラが商品になったものです」と話すのは、伊良コーラの生みの親“コーラ小林”こと小林隆英さん。ADKでイベントの部署に所属していた経験もあり、ブランドの世界観は小林さん自身のディレクションでつくりあげている。パッケージや店舗のデザインは、まず小林さんが手書きで、完成形のイメージを絵と言葉にする。それを外部のデザイナーに伝え、細部のデザインを詰めている。
コーラに注目したきっかけは、小林さんがもともと偏頭痛持ちだったこと。そして、ある日「偏頭痛にはカフェインが効く」と言われてコーラを飲んだら痛みが和らいだことだ。そんな経験からコーラを飲む頻度が増え、大学時代には世界中でコーラを飲み歩くほどに。そして、社会人1年目、インターネットサーフィンをしている時に、偶然100年以上前のオリジナルのコーラレシピと言われる「シークレットフォーミュラ7x」に出合ったという。
「そのレシピは意外にも単純で、自分でもつくれるかもしれない、と。初めて完成したときの味は、市販のコーラには及ばないものの、コーラらしき味がしました。そこから、会社員としてADKに週5日勤めながら、空いた時間を見つけてはコーラをつくり続けました」。
しかし、その道のりは決して順風満帆ではなかった。100回以上も試作し、1年、そして2年が経過しても、自分の納得がいく味には仕上がらない。そんな中、和漢方職人であった小林さんの祖父が亡くなった。工房に遺された和漢方に関する資料や道具を手に取って眺めたり、家族で祖父の思い出話をしたりするうちに、和漢方の調合技術や道具がコーラづくりに活かせるのではないかと、ひらめいたという。和漢方の資料を参考に火の入れ方や工程を変えてみると、風味も味も格段に向上。試作品を何度か飲んでもらっていた同僚からの反応も「お金を払ってでも飲みたい」と上々。それが2018年6月のことだった。
約1カ月後の7月28日には、移動販売車「カワセミ号」で青山ファーマーズマーケットに初めて出店。当時の貯金のほぼすべて300万円を費やしての挑戦だ...