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2020年代のアートディレクション

世の中と折衷する企画力がデザインの力を引き出す

川腰和徳(電通)

2019年のクリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞した電通 川腰和徳さん。人を動かす企画力を武器に話題づくり、売れるモノづくりを行ってきた。デザインで付加価値を創造することを目指し、幅広い人にデザインについて学んでほしいと考えている。

電通 川腰和徳(かわごし・かずのり)
1979年鳥取県生まれ。2007年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業、同年電通入社 アートディレクションを軸とした統合ブランディングを専門に「人を動かす」キャンペーンや「売れるモノづくり」を数多く手掛ける。2019クリエイター・オブ・ザ・イヤー、NYADC金賞、ONESHOW金賞、D&AD イエローペンシル、ADFESTグランプリ、ACC 総務大臣賞グランプリ、東京ADC賞、JAGDA賞、朝日広告賞グランプリなど受賞歴多数。

ADの仕事は「拡張」が求められている

──この10年間、ご自身を取り巻く環境で変化を感じることはありますか?

デジタル技術やSNSの発展により、表現の種類やフィールドが大きく変わっていると感じます。そもそもの媒体の価値も変わり、表現がどんどん細分化しているので、ADがやらないといけない仕事の範囲や求められる役割も広くなっていますね。なおかつスピード感が速くなってきている。特にデジタルでは企業メッセージもタイムリーに発信できるため、速さが求められます。Twitterのトレンドのように話題になるのも一瞬です。

──その変化の中で、どのようなことを意識していますか?

柔軟に対応することですね。特に今はコロナウイルスの影響で生活者の価値観や働き方も消費も大きく変わってきていますので、今まで通りのことが通用しなくなっている。より一層、世の中の流れを意識しながら、柔軟に、スピード感をもって進めていくことが大切になるでしょう。ただ、スピードと言ってもクオリティを落とすわけではなく、的確な判断の中でクライアントが求めているクオリティを出していくことを意識しています。

ADはクリエイティブのインプット/アウトプットを繰り返して脳を鍛え続けていくアスリートのような仕事だと思います。鍛えれば鍛えるほど正解までの最短距離がわかるようになり、スピードも速くなるので、僕も日々鍛えています。その点、10年前はADという1個の種目に特化したトレーニングをすればよかったし、先輩や教えてくれる人が多くいたからわかりやすかった。今は種目がたくさんあり、なおかつ先陣もいない新しい種目が登場しています。種目に応じて能力を使い分けることができないと、これからのADの仕事を拡張はできません。

──「拡張」という言葉が出ましたが、どのような仕事で拡張を実感しますか?

たとえば『君の名は。』の地上波放送プロジェクトでは、厳しいレギュレーションがある中でスポンサー企業同士のロゴを入れ替えることを行いました。これは新たな挑戦で、アイデア次第では面白い拡張ができると示すことができたと思います。他にも、湖池屋の企業ブランディングやフラッグシップ商品の商品開発、富士急ハイランドではアトラクション自体をつくる仕事など、本来であればAD以外の人がやるような仕事をいろいろとやらせてもらっています。

テレビ朝日・東宝「君の名は。地上波放送プロジェクト」

富士急ハイランド「テンテコマイ」

──仕事も拡張している中で、川腰さんのADとしての「軸」をあげるとすると?

軸は「企画」です。デザインはもちろん武器として持っていたいですが、根本的には企画力ですね。先ほど話した通り...

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