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2020年代のアートディレクション

「世の中に無視されないもの」をつくり続ける

井本善之(電通)

新宿の地下通路に現れた「巨大クロネコ」、繁華街を走った漫画『闇金ウシジマくん』のデコトラ、タイガー魔法瓶が展開したファッションコレクションなど、そのブランドを思いもよらぬビジュアルやプロダクトで表現してきた井本善之さん。どんな仕事においても常に心がけているのは、「世の中に無視されないもの」をつくることである。

電通 井本善之(いもと・よしゆき)
1984年横浜市生まれ。2008年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業、同年電通入社。主な仕事に、日清カップヌードル「謎肉増量」「大坂なおみ優勝広告」、ヤマト運輸「巨大クロネコ」、渋谷駅前ニューイヤーカウントダウン、ラコステ「OLD meets NEW!!」、CHAI「N.E.O」、小学館「ウシジマデコトラ」など。主な受賞にNY ADC Silver/D&AD Graphite Pencil・Wood Pencil/Adfest Gold/PR awards Asia Goldほか多数。著書に「クリ活 広告クリエイターの就活本」。

ADはもっと自由でいい

──入社12年目、ご自身を取り巻く環境は変わりましたか。

電通のクリエイティブ全体としては「褒められ方」が拡がった気がしています。僕が入社した当時はまず、新聞広告賞を獲り、有名な人について、大きな仕事に携わって・・・みたいな形でしか、なかなかスタークリエイターが生まれづらかった感じがありました。だけど今はいろんな角度で評価されるようになり、PRやデジタルをはじめとしたさまざまな形でのし上がるクリエイターが増えましたね。ADという職においても、美大卒の聖域みたいなことが崩れてきていて、デザインの概念も拡がってきている感覚はあります。

──クライアントから求められるものも変わりましたか?

企業がメッセージを発信する場、メディアがとにかく増えたので、これまで以上に「世の中に自分たちの商品を知ってもらうためには何がベストか」という幅広いアイデアが求められるようになってきていますね。今までと違う、新しいクリエイターをいろんな企業が探している実感があります。

──井本さんが手がける広告キャンペーンはビジュアルだけに終わらず、いつも「企画」が立っていますね。

企画が立ちすぎていると、表現が主役になれないんで、ADとしては敬遠されがちですよね。実際、ADで活躍している人の作品って、個の持つ表現の力が際立っているものが多く、企画が立って見えるものって少ない。

僕の場合は誰がいつどこでどんな風に接触して、どういう感情になるのか、そこをしっかり考えてものをつくるのが楽しいというか、「何を表現したか」だけより、いろんなことの総合点で接触した人を「どんな気持ちにさせるか」みたいなことが単純に好きなので、企画が立って見える制作物が多いのかもしれません。僕からすると、ひとの気持ちを動かすのに、アイデアの手助けがあった方がむしろゴールに近づくので、企画は強い方がいいと思っています。その上で、最大限に自分らしい表現を出していくのが自分のスタイルなんです …

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