スタイリストであり、多くの書籍や連載も手がける伊藤まさこさんの活躍ぶりについては、ここで触れるまでもない。その伊藤さんが「weeksdays」という店を『ほぼ日』で立ち上げた。どんな試みが詰まっているのか、話を聞きにいった。
ネット上で石造りのデパートみたいな店を
住宅街の中に佇んでいて、いい感じに年月が染み込んでいるマンションの一室、扉を開けると「いらっしゃい!」と伊藤さんの明るい声が。猛暑の昼下がりなのに、つるんとした素顔が潔く、さらりとした笑顔がかっこいい—この按配のよさが伊藤さんの魅力だと思いながら、おしゃべりはスタートした。
伊藤さんは、国内外のさまざまな地に行き、数えきれないほど多くの人やものと出会ってきた。そんな中で、かれこれ10年くらい前から、面白い人ともの作りしたいと考えるようになった。作り手や工場を取材することで、そのもののよさがくっきりするし、「こうしたらもっとよくなる、ほしくなる」と感じることもある。「いいものを作っていて、一緒に作りたいものがあったら、個人の作家でも大企業でも、断られてもいいから、おそれず声をかけてみよう」—一緒に作って、売ってみたいと思ったのだ。
「描いたのは『365 department store』というコンセプトでした」。百貨店は、地下の食品にはじまって、婦人服、紳士服、家庭用品、生活雑貨、レストランやカフェなど、暮らしを取り巻くあらゆるものが揃っている。老舗のデパートには、上質なものを丁寧に取り扱っているイメージもある。「年中無休で365日やっているネットのお店だけれど、石造りの古いデパートみたいに」を想定し、毎日、新しい商品が登場するワクワク感を盛り込みたいと考えた。
そう聞いただけで、既に気持ちは訪れたくなってくる。それは、伊藤さんが目利きのスタイリストで、いいものを紹介してくれるという理由だけではない。おしゃれで素敵なものを揃えているショップは、他にもたくさんある。でも伊藤さんのお店は、着てみた時の気持ちよさ、使う時の豊かな気分、食べる時の嬉しい心地など、「ものがそこに存在して、使われている空気」まで運んでくれるに違いない。そして背後に、作り手の顔や手が透けて見えて信頼できる—そんな期待を抱かせてくれるからだ …