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デザインプロジェクトの現在

キーワードを文字で綴るところからデザインは始まる

吉田ユニ

ルミネやラフォーレ原宿をはじめとする吉田ユニさんの仕事は、以前から気になっていた。背景のそこかしこに"ファッション的な艶っぽいもの"が散りばめられている。それが、どんな風に生まれてくるのか知りたくなって、話を聞きに行った。

SOEN/75 years of girls

小さい頃から好きだったモノ作り

吉田さんのオフィスは、原宿にあるマンションの一室で、欅並木がのぞめる一等地だ。ミーティングルームにも吉田さんの仕事部屋にも一軒家のような空気が漂っていて、静かで落ち着いた佇まい。よく見ると、書棚をはじめ、部屋の随所に一風変わった面々が──人間の歯型や内臓が見える動物の模型など、愛らしい吉田さんから想像もできないものの数々──このギャップが存在する世界は、吉田さんの仕事そのものと感じた。

「小さい頃からモノを作っているのが大好きだったんです」という吉田さんは、やわらかい笑みを浮かべてゆったり語る方。作品の数々から、鋭利なエネルギーを強く放出する方と想像していたので、ここでも予想は裏切られた。

何を作っていたかというエピソードがまたユニーク。小学生の頃のこと、「近所で駄菓子屋をやっているオジサンの靴下の柄が気になって、帰ってからひたすらその柄を描いていました」。モノ作りは、平面に留まらず立体にも及ぶ。歯医者に置いてある人体の歯型をピンクの練り消しで作り、白い小石を歯に見立てて埋め込んでみる。白い石を黒く塗って虫歯にし、その上から白く塗って治療する。

あるいは、新聞紙を丸めて本物そっくりの西瓜を作り、それをスーパーの袋に入れて、いかにも重そうにして近所を歩き回る。耳かきについている綿にベビーパウダーをつけ、家中ポンポンたたき、セロテープで指紋をとって黒い紙に貼る鑑識ごっご──数々の一人遊びをしていたという。

どこかに艶めかしい気配がある、陰影のある物語が浮き出てくる、作風のルーツを聞いた思いだった。

「渡辺直美展 Naomi's Party」のためのビジュアル

吉田ユニ個展「IMAGINATOMY」

ルミネ「COLOR ME AUTUMN」

ワコール「アンフィ フルフル」

設定やシーンを創ってしまう

迷うことなく美大に進み、高校では油絵を志していたが、大学で広告の授業を受けて「制約のある中で行う表現活動が好き …

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