パリのサントノーレ通りに「Le Grand Musée du Parfam=香りのミュージアム」というところがある。歴史、科学、アートなど、さまざまな側面から香りをとらえたユニークな博物館だ。
デザインされている香りの体験
サントノーレ73番地、ブリストルホテルの向かいに位置しているのが「Le Grand Musée du Parfam(以下、ミュゼ・パルファム)」。由緒正しい風情が、少し奥まった入り口に漂っている。ここはもともと、貴族の館として18世紀に建てられたもの。「パフュームはフランスを代表する産業のひとつであるにもかかわらず、ミュージアムがない」と考えていたGuillaume氏が、いくつかの香水や香りにまつわる団体をパートナーとし、約2年の年月を賭して作り上げた。
確かに"香りの博物館"というのは耳にしたことがない。一方、五感の中で嗅覚の担っている役割は小さくないと思いが及ぶ。身にまとう香水にとどまらず、「あれを食べた時」「あの人と会った時」というように、食、住、遊、知、すべてのシーンにおいて、香りは記憶と密接に結びついている。どんな博物館なのかと、ワクワクして取材に行った。
「ミュゼ・パルファム」は4層にわたっていて、延べ面積は約1400平方メートル。奥に1200平方メートルもの庭を備えた贅沢な空間。全体は、大きく4つのパートに分かれている。地下1階は、香水の歴史について触れているパート。太古の昔から今に至るまでの香りの変遷が、その時代を象徴する人物とともにストーリー仕立てで解説されている。
例えば、カトリーヌ・ド・メディシスがフィレンツェから調香師を連れてきて、フランスで香りを流行らせたことや、ナポレオンがコロンを飲んでいたこと。ココ・シャネルが香水に科学的な人工物を入れたのは、調香の概念を変える画期的な出来事だったことなど、香りと人の関わりが立体的に見えてきて興味が尽きない。
そして1階はショップ。香水にまつわる書籍やグッズが置いてあるコーナーと、ミュージアムがセレクトした香水のコーナーが広がっている。中には「ここにしかない」稀少な香水もあって購入することも可能。時間が経つのを忘れて、あれもこれもと説明をしてもらい、香水のバリエーションの幅の広さと奥行きの深さに驚いた ...