銀座にオープンしたばかりの「SHISEIDO THE STORE」のショーウィンドウとセレクトグッズスペースを、美術家のミヤケマイさんが手がけたと耳にした。ミヤケさんの活動が前から気になっていたので、早速、話を聞きに行った。
日本文化の一翼を担う企業だから東洋思想を土台に
東京・銀座7丁目、中央通りに面した「SHISEIDO THE STORE」は、資生堂のいわばランドマーク的な存在。「資生堂が培ってきた美のソリューションを総合的に提案する施設」として、1月19日にリニューアルオープンした。「創業以来、145年の歴史の中で培ってきた資生堂の美意識と、多方面で活躍するクリエイターの感性を融合させる」ということから、ミヤケさんに依頼が来たという。
まずはショーウィンドウ。施設の顔とも言える存在であり、「日本文化の一翼を担う企業として、東洋思想のひとつである陰陽五行を土台に据えた」(ミヤケさん)。“陰陽五行プラス桜”をコンセプトに、木、桜、火、土、金、水というテーマのもと、年6回変えていくことにした。オープニングを飾ったのは“木”。「生命力の象徴としての木」に着目し、常盤松をはじめとする常緑樹を、“押し花”ならぬ“押し木”を立体的に重ねて展示した。
濃い緑を蓄えた木々が、根の部分まで含めて“押し木”になっているさまは、“押し花”の繊細さや儚さとは異なる──厳しい季節を越えていく逞しさ、根を張って生き続ける命の強さ、自然が作り出した造作の美しさなど、足を留めて見入る人もいる迫力だ。
他のウィンドウは、「菰巻き」の手法を生かした作品の数々──これは、江戸時代から行われてきた害虫駆除の手法で、木の幹に藁で作った「菰」を巻きつけるもの。家族のような樹木のさまざまな丸太を「菰巻き」の手法を用いて作り、さりげないシーンを描いている。
見たことはあるものの、普段の暮らしに近くない「菰巻き」が彩る情景には、非日常性と日常性、大胆さと繊細さ、土着性と普遍性など、さまざまな要素が同居している。日本人なら根っこにあるものをくすぐられるし、海外の人ならさりげなく日本的なものを受け取るのではと感じた …