クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。今回は、「spoken words project」の飛田正浩さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

『いわさきちひろ生誕100年 Life』
(いわさきちひろ記念事業団)
画家であり絵本作家であるいわさきちひろ。彼女の生誕100周年を記念し7人の表現者が彼女にまつわる作品を制作した展覧会が始まっています。その参加作家をメインにまとめられた記念の一冊です。それにわたくしどもspoken words projectも参加しており、いきなりの私事です。
美大浪人生時に熱心に彼女の作品を模倣した時期がありました。パレット上で色を混ぜたっぷりと含ませ塗り重ね色を出す油画と違って、水彩画はとにかくいじり過ぎないこと。画面に置いた絵の具に色を重ねれば重ねるほどにそれは濁ってゆきます。完成を知りやめ時を知る、彼女はそれがみえていたのでしょう。
画面に置かれたそれははじめ単なる水彩絵の具のグラデーションその溜まりなのですが、そこに花芯を描き込むといきなりポピーになる。黒から藍色のグラデーションに点を削るといきなり夜空になる。目とくちばしを描き込めば羽ばたく鳥になる。この一筆主義は水墨画にも似た製作行程です …