10年前に独立した人はどんな背景から、どんなことを考え、自分の場所を築いたのか。そして、この10年の間にどんな変化があったのか。今回は、博報堂から独立し、WHITE DESIGN、WHITE Co.、MILKを設立した後智仁さんです。
──10年前に博報堂から独立しようと思った理由を教えてください。
30代半ばにさしかかったとき、クリエイティブの現場だけでなく企業人として管理的な業務も会社から求められるようになりました。「現場主義でいくか」「企業人としての役割を果たすか」自分自身に問いかけた結果、独立することを選択しました。
僕より少し前に、よく仕事をしていた先輩で、コピーライターの斉藤賢司さんが独立していたので話を聞いてみたんです。
すると、タイミングはそれぞれだけれど、人はだんだん衰えるだろうと前置きをした上で「仮に50歳まで質の良い企画を考えられるとしたら、30代後半の現在、残りはあと十数年。独立してその環境を自分のものにするのに3、4年かかるとなると、ベストの状態でフリーとして働ける時間は10年しかない。一人でやってみたいと思うなら、もう今やらないと間に合わないと思った」とおっしゃっていて、衝撃を受けたことを覚えています。
それまで、自分のキャリアを終わりの方から考えたことがなかったので。
その時に、これからは100%自分の責任でデザインの仕事をして生きていきたいと思い、WHITE DESIGNを設立しました。
──独立後は広告だけでなく、幅広いジャンルの仕事も手がけられています。
独立してよかったのは、仕事で付き合う人の幅が広がったこと。それまでの僕はデザインのディテールや最終的な定着に興味があって、かっこいいポスターをつくることや、キャンペーンをデザイン的に成功させることを重視していました …