現在開催中の「谷川俊太郎展」。本展は詩の展覧会だが、単に壁面に詩を展示するのではなく、谷川さんの身のまわりのものや仕事の断片を通じて詩作の根源に触れることができる。

ギャラリー2は「自己紹介」をもとにした展示。本のイメージを大事にし、柱に書かれた文字には鳥の子紙の風合いを持つ紙を使用している。撮影:木奥惠三
空間で詩を味わえる会場構成を
詩人 谷川俊太郎の展覧会「谷川俊太郎展」が、3月25日まで東京オペラシティ アートギャラリーで開催されている。
会場の構成を担当した空間デザイナーの五十嵐瑠衣さんは、「会場を一冊の本と捉えました。まず1章で谷川さんの詩が持つ言葉のリズムに、2章でそれが詩の"行"に、3章で詩そのものに照準をあわせ、章が進むにつれて詩の世界が広がり、深まっていくイメージで構成しました」と説明する。
3つの展示はそれぞれ谷川さんの詩を題材に空間がつくられている。まずギャラリー1は谷川さんの朗読と小山田圭吾さん(コーネリアス)の音楽と中村勇吾さん(tha ltd.)の映像によるコラボレーション。続くギャラリー2は、2007年に刊行された詩集『私』に収められた「自己紹介」の20行を、一行ごとに記した柱が立ち並ぶ。そしてギャラリー3では、壁一面に広がる谷川さんの新作の詩が来場者を迎えてくれる。
展示グラフィックを担当したアートディレクターの大島依提亜さんは、2016年末からこの企画に関わっている。「まずは谷川さんという人物と詩を学ぶことから始めました。膨大な作品の中で出合ったのが『自己紹介』。この詩には谷川さんを知るための手がかりが詰め込まれていました。この詩を中心に据えることで、過去の仕事を振り返るのではなく、谷川さん自身に迫っていくものにしようと考えました」と話す。
詩人の暮らしを通じて詩作の根源に触れる
なかでも『自己紹介』を一行ごとに分け、柱にしたギャラリー2は、谷川さんの言葉で谷川さん自身を知ることができるようになっている …