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企業・社会を変える クリエイティブプロジェクト

サービスとの一体開発で未来の乗り物の実用化を目指す

「OPEN ROADPROJECT」トヨタ自動車

バイクのようにコンパクトで、狭い空間にも置けるトヨタ自動車の未来型パーソナルモビリティ「TOYOTA i-ROAD」。このi-ROADの実用化を目指し、2015年7月から行われている実証実験プロジェクトが「OPEN ROAD PROJECT」である。

『駐車場問題』から始まった

「バイクとクルマの中間のような乗り物」と形容される「TOYOTA i-ROAD」は、バイクのような操作性とクルマの居住性を併せ持ったパーソナルモビリティである。ハンドルを回すと電子制御でバイクのように車が傾き、独特のコーナリングが楽しめる。動力は電気で環境にもやさしく、都市型の移動に適しているのが特徴だ。i-ROADは、2013年のジュネーブモーターショーで発表されたコンセプトカーが元になって開発されている。ここで大きな反響があり、市場導入の可能性を探ることになった。市場導入に向けての調査や実証実験は、トヨタ自動車「未来プロジェクト室」に預けられた。オープンイノベーション型の体制で新しい商品コンセプトやビジネスモデルを提案するために作られた直轄組織である。

市場導入に向けた第一歩として、i-ROADのポテンシャルを探るため、2014年、都内での一般モニターへの貸出による調査が行われた。すると「走りがいい」などプロダクトの性能自体を高く評価する声が上がった一方で、「ちょうどいい駐車場がない」「充電場所がない」など、プロダクト以外の部分で課題があることがわかった。そこからプロダクトと同時にその周辺のサービスを開発する必要性に焦点が当たり、2015年7月に立ち上がったのが「OPEN ROAD PROJECT」だ。総勢100人の試乗パイロットと共に、実用化に向けた改良・開発を進めていく実証実験だ。

OPEN ROAD PROJECTがまず取り組んだのが、駐車スペースの開発だ。プロジェクト立ち上げメンバーの一人である電通コミュニケーションデザイナーの志村和広さんは、あるエピソードを振り返る。「ある日街を歩いていたら、駐車場に2台の高級車に挟まれるようにして、i-ROADが駐車していたんです。それを見て象徴的な景色だと思いました」。i-ROADに必要な面積は、通常のクルマの4分の1。にもかかわらず、高級車と同じ金額で駐車場を借り、スペースを余らせていた。本質的な課題を目の当たりにした思いだった。

i-ROADが停められそうな場所として注目したのは、住宅や店舗の軒先など都市に多数存在する『狭小スペース』だ。しかし、こういった場所をどう探し出し、許可を取っていけばいいのか。これまでにないアウトプットの仕事ゆえ、誰に入ってもらうかもゼロから考えていく必要があった。志村さんは、大小さまざまなレンタルスペースを扱うスタートアップ企業やOOH専門会社に声をかけ、場所を探すところから始めていった。「駐車スペースを探してほしい」と本業ではない依頼にはじめは驚かれたが、狭小スペースを見つけては、地元の不動産会社に連絡を取り、オーナーを紹介してもらって許可を取る、ということが一件一件繰り返された。プロジェクトが進むにつれ、試乗パイロットが自ら新しい駐車スペースを見つけてくれるようになり、さらに駐車スペースは拡大していったという。

志村さんが街で見つけた、高級車2台に挟まれて駐車するi-ROAD。駐車場問題に取り組もうと決意させた景色。

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