アイデアとは新しい組み合わせである
『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)を初めて手にしたのは、美大受験の予備校に通っていたとき。同じ予備校で尊敬していた友人に。この本いいよ」と薦められたのがきっかけです。その友だちはアートやデザインに詳しいだけではなく、流行の半歩先を颯爽と走っているような人。感度が高く知的で、今から30年以上前に「デザインは表層的なものではなく、経済も動かす」といった話をしていたほどです。そんな友人がすすめるなら間違いないだろうと、買ってみました。
デザインの見方
2011年、フランスへ撮影に行ったときに、パリ装飾芸術美術館で開催されていたジャン・ポール・グードの回顧展「グードマリオン」を見ました。会場の真ん中にディスプレイされていたのは蒸気機関車。その周りを、ドレスを着た女性たちがまるでぜんまい仕掛けのようにくるくると回っている。ある部屋では、フランスの百貨店ギャラリー・ラファイエットのイメージビジュアルを展示。人や電車が行きかう駅に掲出されているビジュアルを撮影し、部屋全体を取り囲むように設置されたモニターにはその映像が映しだされている。館内にはシャネル、ディオールといったハイブランドのビジュアル、アーティスト グレース・ジョーンズのグラフィックなど、ありとあらゆる作品が展示されており、まるでファンタジーの世界に身を投じたよう。僕はこの回顧展で、一気にグードに魅せられてしまったんです。
作品もさることながら僕が驚かされたのは、彼のスケッチ。かなりデフォルメされているものもあるのですが、見るだけで彼が何をやりたいか、意図が理解できる。普通なら「そんなの無理」と思うようなスケッチばかりですが …