最近、子供の頃に好きだった絵本を買い直しています。姉妹や友人に子どもが生まれ、絵本をプレゼントするとき、自分が子どもの頃に気に入っていたものをあげたくて、あらためて自分に買ったのがきっかけです。それらを読み返してみると、私が好む絵本には傾向があり、その気持ちは大人になっても変わっていないことに気付きました。これまでさまざまな人や物事から影響を受けてきましたが、原体験は絵本なのだと思います。
私が特に好きなのは、中心となる物語とは別のサイドストーリーを、読む人それぞれが想像できる絵本です。たとえば、マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本『おやすみなさい おつきさま』(評論社)は、子ウサギが夜眠るまでのひとときを描いたシンプルな物語です。子ウサギは、眠る前に部屋の中にあるもの一つひとつに「おやすみなさい」と語りかけていきます。絵のタッチや色遣いなど絵本の世界観も素敵なのですが、それと同じくらい惹かれるのは「おやすみなさい」と語りかけていく過程で部屋の中の様子が少しずつ変わっていくところ。子ウサギがいる部屋をよく見ると、編みものをしているウサギのおばあさんや、毛糸にじゃれて遊ぶ2匹の子ネコ、窓から見える月、時計の針などが、ページをめくるごとにほんの少しずつ変わっていきます。部屋は徐々に暗くなっていき、最後は子ウサギも2匹のネコも眠っているシーンで終わります。しか…