01 シルバラード:ピックアップトラックを好む女性が増えたことを察知したシボレーは、ユニークなカーガールが登場するCMで、女性消費者にアピール。荒々しいロデオライダーでありながら、叙情的なカットや画面で、女性消費者の心を使う努力をしている。
「ステーシーのママ」(Stacy’s Mom)というポップ・ミュージックを覚えているだろうか。2003年にファウンテン・オブ・ウエインというアメリカのポップバンドが演奏し、ビルボード誌の“ホット15”に入ったヒット曲である。清涼飲料水ドクター・ペッパーのCMにも採用され、ここでもまたヒット。服装もかまわない、忙しそうな母親が、ミニバンで子供たちが遊ぶ公園にやってくる。怪訝そうに、不審そうに見守る子供たち。母親が謎めいた微笑を浮かべて手の中の車の鍵のボタンを押す。ゆっくりと開く車のドア。そこには氷の上に横たわるドクター・ペッパーが!スケートボードも忘れて車に走りよる少年たち…。
2013年の秋、この「ステーシーのママ」が再びCMに登場した。だが今度はミニバンに乗った専業主婦ママではなく、粋なスーツとスラックス姿のキャリアウーマン・ママ。会社に行く途中で、ステーシーを学校まで送ってきたのだ。豪華な、美しい車にうっとりと見とれるどこかのパパ。キャデラックSRXのTVCMである。
02 ドクター・ペッパー:服装もかまわない、いかにも急がしそうなママが、ミニバンで子供たちが遊んでいる公園にやってくる。子供たちが大好きなドクター・ペッパーを振る舞うために。ここに登場する「ステーシーのママ」は間違いなく専業主婦。同じテーマ音楽を使ったキャデラックのCMのママとは大違い。時代の流れを感じさせる。
03 キャデラックSRX:2003年のヒット曲「ステーシーのママ」がテーマ音楽、登場するママはパンツスーツを着たキャリアウーマン。同じく子供を学校に送って来た数人のパパたちが、うっとりとした表情でママではなく、キャデラックSRXを眺める。
台頭する女性の経済力と影響力
この二つのCMには、消費者としての米国女性の変遷がよく現れている。米国の女性は、いつのまにか、専業主婦というブレッドメーカー(パンを作る人)からブレッドウィナー(家族の生活費を稼ぐ人)に推移したのだ。調査/情報会社HISの2013年の調べによると、米国の車の所有者登録の39%は女性であったと報告されている。また、カリフォルニア大学が行なったサーベイによると、車の購買の85%が、女性の影響力で決められていると言う。消費者調査会社パルス・オピニオン・リーダーが2012年10月に行なったリサーチによると、女性は新車、中古車、そして車部品/アクセサリーなどに、年3千億ドルを使っていると言う。「女性は最も急速に成長している消費者グループです」と、2006年に女性の自動車購入のためのアドバイスを提供するオンラインサイト、「アースクパティ」(Ask Patty)を創始した同社のCEO ジョディ・デビアは言う。彼女は、女性を受け入れないデトロイトの自動車メーカーの間で、認められ、信頼されている希有な存在である。アースクパティは、女性が車に関して知るべきあらゆる情報例えば信用できる中古車のディーラー、タイヤの違い、オイルチェンジの仕方、公認修理工場の場所などを提供している。「もはや女性消費者を無視して通れないことを、デトロイトも理解している」と、彼女は言う。
例えば ...