スーパーボウルが終わるとすぐソチ冬季五輪が開催されたため、今年のスーパーボウルは、余韻もなく終わってしまった感がある。だが、よく考えてみると、スーパーボウルに余韻がなかったのは、五輪のせいだけではないようだ。ここ数年、スーパーボウルを利用する広告主のマーケティング手法が大きく変わっているのだ。
2、3年前まで、スーパーボウルのCMと言えば、広告主も、広告会社も、放映の当日までその内容に関してはひた隠しにするのが常であった。テレビの前に集まっている視聴者は、どんなCMが現れるのかと、固唾をのんでテレビの前に座っていたものだ。そんな消費者をあっと驚かせ、強い印象を与え、放映終了後もオフイスの井戸端会議のトピックスになる。それが、高価なスポット料金を払って行うスーパーボウルCMのマーケティング手法であった。
スーパーボウルCMの前哨戦
ところが、いまやほとんどの広告主は、放送の数日前、ときには数週間前にYouTubeやブランドのWebサイトなどでスーパーボウルCMを公開するようになった。今年はYouTubeの「AdBlitz」や「Hulu」が、スーパーボウルの2週間以上前から、スーパーボウルCMのティザーを集めたページを立ち上げた。その理由は、ソーシャルメディアの台頭である。「数百万ドルにものぼるスポット料金の元を取るには、放映日まで待っていられない。できるだけ早く視聴者の目に触れる場所に持っていき、あわよくばヒットさせようと、多くの広告主はスーパーボウルCMの公開を急いでいる」と、ニューヨークタイムズの広告評論家スチュアート・エリオットは語っている。
マーケティング・テクノロジー会社アンルーリーよると、2013年、最も多くソーシャルメディアに現れたスーパーボウルCMの20本のうち7本までが試合放映前に公開されたという。
「パピー・ラブ」へのラブ
費用と才能をフルに投入するスーパーボウルCMとはいえ、万人の心をつかむCMが現れるのはまれだ。が、今年はそれが起きた。USATodayの「アドメーター」などで、他を引き離して断トツのトップに躍り出たCMがある。バドワイザーの「パピー・ラブ(子犬の愛)」だ(01)。
有名なバドワイザーの馬クライデスダールの牧場に、子犬が生まれた。その中の一匹は、どういうわけか馬が大好き。いつも囲いから抜け出して馬に会いに行く。ある日、その子犬が里子に出されることになった。里親の元へ向かう車の中で悲しそうに泣く子犬。それを見た数頭の馬が、走り去る車の前に立ちふさがる。車から飛び出し、農場に向かって走る子犬。子犬を守るように、後ろからついていく馬たち。