3月17日、セント・パトリックス・デー。この日、NYの街には緑色が氾濫する。アイルランドの聖人セント・パトリックスの命日を記念した宗教的祭日で、ニューヨーカーの多くが、アイルランドを象徴する緑色の洋服や帽子、リボンやスカーフなどをまとって街を歩くからだ。また、NYの警官には、アイルランド系の人が多いので、この日には「お巡りさんの日」という異名もある。そして、もう一つ、この日を象徴する名前がある。「ビール・デー」。NYのセカンド・アベニューに軒を並べるアイルランド系のパブの多くは、ビール瓶を片手に気炎を上げる若者たちであふれる。
王座を去ったビール
だが、カウボーイ時代から米国庶民の生活と深い関係を持ってきたビールも、ここ20年ほどの間に、その王座を他のアルコール飲料に奪われてしまったようだ。1990年代のビール全盛期に比べ、人口の増加にも関わらず、その消費量は20%減少。ワインやリカーと呼ばれる蒸留酒が有力な競合相手ではあるが、同時に、ハイネケン、モルソン、コロナ、キリン、ステラ・アートイスなど、外国からの強力な競合相手も米国のビール・マーケットに侵入した。これらの輸入ビールは、その独特の味わいだけでなく、アメリカのビール業界が考えもしなかったような新鮮な、ダイナミックな、クリエイティブなテレビCMと一緒に、米国になだれ込んだ。ここでは、90年代後半から2013年までに登場した輸入ビールの広告と、それを迎え撃つ米国のビール広告の中からトップ5を選んで紹介しよう。