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ディレクターに聞く キャスティングの裏側

即興性を重視し「おもしろ」CMを生み出す

北岡英久

「お笑いのプロじゃないから、計算した笑いではなく、結果的に笑える映像を目指す」。そう話すディレクターの北岡英久さんは、現場の即興性を重視した映像づくりを行う。

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きたおか・ひでひさ
関西大学文学部卒。テレコムジャパン、大阪テレコム、電通プロックス、電通テックを経て、現在フリー。

一生懸命から生まれる笑い

80年代の青春ソング風の音楽を背景に、愛媛県の高校を舞台に展開する女子生徒と男子生徒の恋が描かれる、赤城乳業「ガツン、とみかん」のテレビCM。しかしその結末は、女子生徒と目が合い、笑顔を浮かべる男子生徒の鼻から鼻毛が飛び出しているというオチだ。演出を手がけたのは、数多くの「おもしろCM」を手がけるディレクターの北岡英久さん。一見ベタな笑いを誘うこのCMだが、北岡さんが出演者に求めたのは「笑わせようとする演技ではなく、一生懸命演じ、結果笑える演技」だという。

キャスティングの段階では、まず鼻毛のプロトタイプを用意し、オーディションに来た人たちへひたすら鼻毛をつけてもらって選考した。「いかにも面白そうなファニーフェイスの人ではなく、正統派イケメンをあえて選んだ」と北岡さん。演出も、王道の青春CMをやるつもりで本気で演技をしてもらった。「お笑いのプロの人たちは、笑わせるための完璧な計算があって、かつその計算が見えないようにすることで、人を笑わせるんですね。笑わせようという意識が透けて見えると、見ている人はシラケてしまうからです。一方で、我々も演者もお笑いのプロではないので計算はできない。一生懸命演技して、それが一歩離れて見ると結果的に面白かった、という笑いを目指しているんです」。そのため現場では何度も演技を繰り返し、偶然生まれる面白さを探っていくという。

漫画家のしりあがり寿さんが描いた奇妙なキャラクターが、「このCMで売り上げのびたら 売り上げがのびたらおかしいよね~」と踊りながら歌う、赤城乳業のチョコアイス「BLACK」のCMも、北岡さんが演出した。踊りは振付師のラッキィ池田さんによる振付だ。

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