グループウェア国内トップシェアのサイボウズ。7月にはオフィスを東京・日本橋に移転したばかりだ。オウンドメディア「サイボウズ式」でもおなじみの同社・青野慶久社長が考える、新たなオフィスを基点とした“自社メディア構想”とは?
2014年11月に実施した「cybozu.com カンファレンス」の基調講演で働き方について語る青野社長。
青野慶久(あおの・よしひさ)氏
1971年、愛媛県生まれ。大阪大学工学部卒業後、松下電工(現 パナソニック)入社。1997年サイボウズを愛媛県松山市に設立、取締役副社長に就任。マーケティング担当としてウェブグループウエア市場を切り拓く。2005年4月より現職。
「『チームワーク』という言葉の『語感』が変わってきましたよね」─。グループウェアサービスを展開するサイボウズの青野慶久社長は、創業以来の社会の変化についてこう振り返る。「世界中のチームワークを向上させる」ことをミッションとし、グループウェアは国内トップシェア、グローバルにもその歩みを進めている。2012年に開設したオウンドメディア「サイボウズ式」をはじめ、2014年から今年にかけて公開され話題となった、ワーキングマザーを描いたウェブ動画など、常に「働き方」に関する議論に一石を投じてきた。
青野氏自らも3度の育児休暇を取得するなど、新しいワークスタイルを体現した経営者として、社内外にその存在を印象づけている。7月に日本橋にオフィスを移転し、今まで以上にコーポレートメッセージの発信力を強めていきたいと語る青野氏。自社、そして自身の「メディア化」に挑み続ける、今後の構想と展望について聞いた。
「自社のPRをする必要はない」
2012年にスタートしたオウンドメディア「サイボウズ式」。ITや働き方に関する情報を発信し、企業によるメディア運営のさきがけとして注目を集めてきた。
「実際の運営はほぼ大槻(初代編集長)や藤村(現編集長)に任せているんですが…。僕がサイボウズ式を開設して良かったと思うのが、普段は接点を持てないような人と出会えることですね。ビジネス上の関係がないような人は中々お会いすることができませんが、メディアの取材を通じてなら会うことができる。そうした出会いによって、これまで接点のなかった市場にある課題を発見することにもつながります」。
青野氏がその一例としてあげるのが、武蔵大学社会学部助教授で男性学を専門とする田中俊之氏との対談だ。2013年5月に配信された「少子化が止まらない理由は『オッサン』にある?『男性学』の視点から『働き方』を考える」と題したこの対談記事は、社会から「男性的」な考え方を求められるという、男性ならではの「生きづらさ」にフォーカスし、6500いいね!(2015年8月現在)を超えるなど大きな反響を呼んだ。
「ジェンダーの問題は女性ばかりに注目されがちですが、男性側の問題でもあります。田中さんは、男女両軸で考えないとこの問題は解決できないとおっしゃっていて …