経営環境やメディアの変化に伴い、社内コミュニケーションのアプローチは日々進化しつつある。7月15日、社内広報のトレンドを読み解く「インナーコミュニケーションフォーラム2015」が開催された。
社内広報は会社をつなぐ旗印
第1部ではクリエイティブディレクターの広瀬さとし氏と産業編集センターの相山大輔氏が登壇。インナーコミュニケーションをめぐる近年の傾向や広報担当者が注視すべきことなどについて対談した。
求められる関係性の再構築
なぜ、今インナーコミュニケーションが重要視されているのだろうか─。基調講演ではクリエイティブディレクターの広瀬さとし氏と産業編集センター はたらくよろこび研究所の相山大輔氏が登壇。相山氏は重要視される背景を「関係性の再構築が求められている」と分析した。
終身雇用や年功序列などの制度は日本企業特有の伝統的な経営スタイルだが、これらはもはや「過去の遺物」にほかならない。いまや社員の契約形態や働き方の多様化、市場の競争の激化に伴い、会社と社員、そして社員同士の関係性が変化してきている。そのなかで、「会社がバラバラにならないような旗印」として注目を集めているのが、インナーコミュニケーションなのである。
社内広報は「選択の時代」へ
従来通り、社内報をただ黙々と制作し続けることがステークホルダー同士の関係性の再構築につながるのだろうか。変革や競争力、そして社内の団結を生むのだろうか。答えは否だ。コミュニケーションの目的、ターゲット、ツール、それらひとつずつを戦略的に見定めなければならない。インナーコミュニケーションも「選択の時代」に突入している。
そうした時代において、広報というポジションは今後社内で重要な役割を果たすことになる。
「広報とは、会社を俯瞰して捉えることができる位置にいる立場。社内の至るところに転がっている情報は一つひとつが武器である。それをかき集めることで、会社の競争力につながるような施策にどんどんチャレンジしてほしい」と広瀬氏は語る。そして、「インナーコミュニケーションに本気で取り組むことで、会社を変えることができる」と広報担当者に向けたメッセージを送った。
何を伝え、何を期待するのか
第2部以降はそれぞれのテーマを設定して社内広報のあり方や事例を紹介した。
企業によってインナーコミュニケーションへ注力するきっかけは様々だが、なかでも経営環境の変化に伴うケースは少なくない。第2部はグループコミュニケーションをテーマに、合併やM&A、純粋持株会社体制への移行などによって組織体系が大きく変わった企業がどのようにインナーコミュニケーションに取り組んでいくべきかを産業編集センターの宮辰夫氏が紹介した。
宮氏はグループコミュニケーションにおいて課題となる「社員の融和」「共通言語の確立」「文化の統一」のためには「グループに対し、何を伝え、どのような効果を期待するのか」を意識したコミュニケーションが重要だと語った。
社内の合言葉をどうつくるか
第2部では東急不動産ホールディングスの森玲美氏から、グループを横断した一貫したキーメッセージのつくり方や、その合言葉をどのように社内に浸透させたかが紹介された。
時には配布対象も絞り込む
第3部は、社内の「ターゲット」を意識したコミュニケーションについて、同社の星野淳也氏が紹介。雇用形態や国籍、役職などが異なる社員の当事者意識を高め、「必要な情報が掲載されている」と捉えて社内報を読んでもらうには「目的を明確にしてターゲットを絞り込む」ことがポイント。時には配布対象ごとにターゲットを絞り込むことも必要だと語った。
続く第4部のテーマはインナーブランディングについて。同社の石原良平氏は、「インナーブランディングは従業員一人ひとりをブランドの体現者として育てるためにも不可欠。企業のあるべき姿を実現する価値を社員に共有し、納得できる形で理解を得ることが重要」と指摘し、継続的な社内広報活動こそがコーポレートブランドをつくり上げると結論づけた。
社員の家族をターゲットに
第3部で登壇した、日立ソリューションズの大居弘明氏。社員の家族をターゲットとした取り組みとして、社内報『ファミリー号』や運動会、家族を会社に招くイベントなどを紹介した。
社長や社員を積極的に露出
第4部では日本マイクロソフトの岡部一志氏も登壇。社内版SNSの活用法や、社長や社員を積極的にメディアやウェブに出していくことで、インナーブランディングを醸成している事例を紹介した。
プログラム
第1部
2015年の社内広報を読み解く
クリエイティブディレクター 広瀬さとし氏
産業編集センター 相山大輔氏
第2部
これからのグループコミュニケーション
~実際に効果が求められるその時に~
東急不動産ホールディングス 森 玲美氏
産業編集センター 宮 辰夫氏
第3部
求心力を高めるターゲットコミュニケーション
~あえてターゲットを絞ることで生まれる当事者意識~
日立ソリューションズ 大居弘明氏
産業編集センター 星野淳也氏
第4部
社員一人ひとりをブランドの体現者に
インナーブランディング最前線
日本マイクロソフト 岡部一志氏
産業編集センター 石原良平氏
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