市場でシェアを拡大していくには、従来の顧客層とは異なる、新たな層へのアプローチも求められる。JCBは2022年11月よりeスポーツチーム「ZETA DIVISION」とスポンサー契約を締結。この取り組みの狙いについて、JCBの2名に話を聞いた。
「成人年齢引き下げ」がカード業界にもたらした変化
JCBは2022年11月、Z世代を中心に人気を集めるeスポーツチーム「ZETA DIVISION」への協賛を発表した。
同社イノベーション統括部の吉野由希子氏は、その背景について、「私たちクレジットカード業界では、年々キャッシュレス決済が多様化する中で市場での競争が激化しています。中でも、一番の変化は2022年4月に成人年齢が引き下げられたこと。18歳から親権同意不要でクレジットカードの入会が可能となり、18歳、19歳という新しいお客さま層が生まれることになりました。この新しいお客さまにどうアプローチするか、当社含め、各社が検討を進めていました」と説明する。
同社の調査によると、30代の半数以上が、20代の時につくったカードをメインで使用し続けているという。若い頃に作成したカードを長く使い続けている人が一定数いることを鑑みると、少子高齢化の中でこれから消費活動を活発に行っていくであろうZ世代にアプローチし、多様な価値観のコミュニティとつながることは、LTVの観点でも重要となってくる。
そこで同社が着目したのが、2018年頃から同世代を中心に世界的人気を博すようになった「eスポーツ」であった。eスポーツを選択した理由について、ブランドマーケティング部の山本尚樹氏は、「最初はeスポーツについてほとんど知識がなかったのですが、昨年6月にさいたまスーパーアリーナで行われたオフラインイベントに参加したところ、その熱気や会場の一体感に圧倒されました。eスポーツという競技と、それを取り巻くファンコミュニティの熱量の高さを感じましたね」と話す。
企業としてのeスポーツへのかかわり方は、「大会への協賛」「eスポーツ施設への協賛」「チームへの協賛」など様々な方法があるが、コミュニティの持つ熱量に可能性を感じ、「チームへの協賛」という形を選択。eスポーツチームの中で、「ZETA DIVISION」への協賛を決めた理由について、山本氏は次のように話す。
「『ZETA DIVISION』は、タクティカルシュータ『VALORANT』で世界三位※になるという日本史上初の快挙を遂げるなど、大きな注目を集めているチームです。ファンの年齢分布をみると、半数以上がZ世代にあたり...