推しへの思いは、対象コンテンツの鑑賞にとどまらず、様々な消費行動へと広がっている。ここでは、キャラやアイドルなどの推しをディフォルメしたぬいぐるみ「推しぬい」と、推しをイメージした香水である「推し香水」の事例を紹介する。
推しぬい
Q1. どのようなニーズを感じてつくった書籍ですか?
A. ハードルを下げればもっと「推しぬい」をつくりたい人はいるはず。
「推しぬい」は一過性な流行にとどまらないとの予測から、「自分でつくる」ハードルを下げたいと企画したものです。書籍の企画を開始した2021年秋頃には、動画投稿サイトやSNSで「推しぬい」が話題になり始めていました。
「推しぬい」とはファンの強い思いを具現化した愛すべき存在。「推しぬいを手づくりする」ということは、例えば過去の作品やアイドルで、現在は公式から商品が販売されていなくても、自分の手で生み出すことができるため、好きなものへの思いを形にしたい人たちの手段として、今後も残っていくのではないかなと感じています。
『きせかえできるぬいぐるみ てづくり推しぬいBOOK』は、著者であるぬいぐるみパタンナー、平栗あずささんの「ぬいぐるみづくりを趣味にする人が意外と少ないのは、ノウハウと材料の供給が不足しているからではないか。そのハードルを打開したい」という思いと、「推しぬい」の流行を掛け合わせたことから生まれました。プロのぬいぐるみパタンナーが型紙を引き、つくり方を手ほどき・解説する本は過去にもほとんどなく、需要があるに違いないと感じ、出版に至っています。
Q2. 内容でこだわったポイントを教えてください。
A. “手芸の初心者”でも“市販品に見劣りしないクオリティ”をかなえる方法を追求。
本書では読者イメージを、推しのために手芸を頑張りたいと思う、「ほぼ初心者さん」と想定。「そのような読者にとって、つくり方が分かりやすいこと」にこだわりました。また、「推しぬい」に求められるのは「推しをいかに再現できるか」。つくり手は「推しの公式ぬい」が発売されていない層を想定しているので、その人たちがつくったとしても、市販品に見劣りしないようなクオリティを届けたい、という著者のこだわりを型紙・造形に込めました。
読者となる人々の推しに対する熱意に対し、信頼とリスペクトがあるからこそ、この本の軸は揺るぎませんでした。「分かりやすいつくり方」と「クオリティの高い型紙」の双方を実現するための工夫を、著者・編集双方でアイデアを出して随所に入れ込みました。
Q3. 読者からの反響を教えてください。
A. 「推しぬい」をつくることを身近に感じてもらえている印象がある。
2022年5月に発売し、現時点で累計5万部を突破しています。発売直後はたくさんの質問が届き、著者のネットショップで販売している推しぬいの材料も完売してしまう状態が続きました。完成品をSNSにアップしてくださる方も多く、「#てづくり推しぬいBOOK」の...