ECやメタバース活用も広がってはいるが、百貨店事業にとって最大の武器は実店舗での買い物体験だ。本取材では、この「実店舗での買い物」に注目。リニューアルした小田急百貨店の食品担当の塚本和貴氏に、売り場で「ワクワクする買い物体験」を提供するために必要なことを聞いた。
これまでとは一線を画す 新たな“デパ地下”を目指す
2022年10月、小田急百貨店新宿店がリニューアルを行った。これまでの本館での営業を終了し、新宿西口ハルクへと移転。新たなスタートを切っている。
リニューアルに際し、小田急百貨店新宿店は2022年12月1日、新宿駅西口地下街「小田急エース」北館の西側に「SHINJUKU DELISH PARK(シンジュク デリッシュ パーク)」を出店した。コンセプトは「行き交う人の“ちょっと”を満たす」。新宿駅西口周辺のオフィスワーカーをメインターゲットに、「朝も、昼も、夜も、おいしい通り道」になることを目指す。
「SHINJUKU DELISH PARK」は、いわゆるデパ地下のイメージとは一線を画す売り場構成だ。オープンしたのは施設内ではなく、西口ロータリーに隣接した屋外。文字通り、新宿駅を利用するオフィスワーカーの「通り道」に設置されている。
同社で食品領域の営業企画の統括マネジャーを務める塚本和貴氏は、百貨店がプロデュースする食品集積売り場とはいえ、良い意味で訪れることに特別感を抱かせない設計を意識したと話す。
「『SHINJUKU DELISH PARK』は、朝でも、昼でも、夜でも、欲しい商品があることを強みとしている売り場です。平日は朝8時からオープンしているエリアもあり、オフィスワーカーが出勤前に朝食に利用できるほか、ランチにも使えるラーメン店などを設置しています。デパ地下ではありながらも、出勤時や仕事帰りに毎日フラッと立ち寄ってもらえるよう、意図的に高級感を出していません。価格も手に取りやすい値段にこだわりました」(塚本氏)。