京都、鎌倉に店を構える梅体験専門店「蝶矢」。完全予約制のサービスは利用客が後を絶たないという。足を運んでまで体験したくなる理由は何なのか。CHOYA shops代表取締役社長の菅健太郎氏に、事業企画時に構想していた体験設計の裏側や販売の現場で重視していることを聞いた。
梅酒の「梅」に感動 直接伝える手段は店舗だと思った
2018年、京都にオープンした梅体験専門店「蝶矢」。老舗梅酒メーカーのチョーヤ梅酒が、梅の新しい価値を「体験」を通して伝えるべくローンチした新規事業だ。
2021年からは、事業を社内ベンチャー企業化したCHOYA shopsが運営している。
「蝶矢」が提供するのは、梅シロップや梅酒の手づくり体験。5種類の梅から1つ選び、そこから混ぜ合わせる砂糖やお酒を選ぶことで、100通り以上の組み合わせの中から自分の好みにあったオリジナルの梅シロップや梅酒をつくることができる。
なぜ、チョーヤ梅酒は「手づくり体験」に着目して新規事業を構想したのか。この背景には、運営会社であるCHOYA shops代表取締役社長の菅健太郎氏の原体験が関係している。
菅氏は当初、チョーヤ梅酒で営業を3年経験。販売店に同社製品のこだわりである梅酒の品質を伝え、販売活動を行っていた。
しかし、そのこだわりを思うように伝えられなかったことを悔しく思っていたという。その後、製造工場に異動。その当時に目の当たりにした梅の大きさや香りへの感動をお客さまに直接伝えたいと考え、事業を企画したという。
「私自身、製造工場に勤務して初めて原料の梅を目にしました。その時の感動は今でも忘れられません。私が製造という“体験”を通じて知った感動をお客さまにダイレクトにお届けするには、お客さま自身に梅酒づくりを体験してもらうしかない。そう考え、実店舗で“手づくり体験”を提供することに決めました」(菅氏)。
利用後も続く「楽しさ」計算された体験デザインとは
「蝶矢」が提供する体験は、自分だけの梅シロップや梅酒を店舗で...