買い物体験における「ワクワク」は、買い物の最中だけに限らず、商品・サービスの背景にあるストーリーや、商品そのものの知識を生活者自身が知ることによって高まっていく場合もある。スタッフによる商品・サービス知識を活用したコンテンツ発信は「ワクワクする買い物体験」にどのような影響を及ぼすのか。
モノの背景にあるストーリーは付加価値になることが魅力
代々木八幡と代々木上原の2拠点に店を構える「Minimal-Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」(以下、Minimal)。大手ホテル企業や人気カフェ/パティスリーにも製品を卸す、人気チョコレート店だ。Bean to Barとは、豆の選別・仕入れから加工・製造・販売までのすべてを手がける、チョコレートづくりのスタイルのこと。Minimalはこの手法で職人が手仕事でチョコレートを造っている。
Minimalの強みはチョコレートの味や製作手法だけではない。接客やオンラインコンテンツを用いた質の高い顧客コミュニケーションも特長のひとつだ。
公式サイト上では、会社を立ち上げた頃の代表の想いや、商品情報を深く掘り下げた記事、生産者であるつくり手の考えなどを一挙に読むことができる「JOURNAL」コンテンツを充実させている。
オンラインだけでなく、店舗でのコミュニケーションにもこだわりがある。「何よりも先に商品の味を知ってほしい」という代表 山下貴嗣氏の考えのもと、すべての板チョコレートの試食が可能。実際に味を感じながら、商品の魅力をスタッフから聞くことができる。アルバイトも含め、月1回以上は商品や店に関する研修を実施。スタッフ全員がMinimalを熟知した状態でコミュニケーションに臨んでいる。
なぜMinimalでは、これほどまでに情報発信を重視しているのか。この背景には、山下氏が創業当時から持っている想いがある。
「以前からモノの裏にある物語やつくり手の話を聞くことが好きでした。製品そのものを楽しむことも好きなのですが、背景のストーリーがあることで付加価値が高まることに魅力を感じていたのです。そこで注目したのが、ものづくりを生業とする方々のクラフトマンシップ。繊細で素晴らしい製品をつくる日本人の技術や想いを海外に伝えたいと...