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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

一瞬の接点でブランドを体感させる グラフィック広告の可能性

八木義博 氏(電通)

    グラフィック広告企画・制作の極意

  • 言葉だけではシェアできない細かなニュアンスを、少ない情報量で瞬時に伝えるグラフィックの特性を理解する。
  • グラフィックを最大限活用するには、点ではなく線の視点での企画が必要。複数メディアを戦略的に組み合わせる設計が重要に。
  • 「ブランドとしてどんな提案ができるのか」という筋の通った設計から、説得力があり、共感につながるグラフィックが生まれる。

思い返せば周りに溢れている グラフィックはみんなのもの

グラフィックと聞くと専門的なアートやデザインの才能がないと理解できないという印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、周りを見渡すとスマホの画面に並ぶアイコン、道路標識、街で見かけるお店のサインなど、私たちの生活にはグラフィックが溢れています。

簡潔な要素によって無意識に行動を促される街中の標識、見るだけでよだれが出てきそうなシズル感たっぷりのレストランのメニュー、なんか良いことが起こりそうな気持ちになる化粧品のパッケージなどなど。瞬時に受け取った情報から行動が喚起されたり、自分の好みに合うものを選んだりと、誰もがグラフィックに慣れ親しんでいることに気づきます。

グラフィックには色々な役割があります。広告・プロモーションの世界での活用でいえば、商品の細かなスペックを知りたいという人にはチラシやカタログのように言語的な情報を徹底的に整理し、適切に正しく情報を届けることが大切です。こうした短期的なプロモーションの場でもグラフィックは機能します。さらに、それだけでなくまだその商品のことを好きになっていない、知ってもいない人との絆を深めていくという中長期的なブランディングにおいても、グラフィックの非言語的コミュニケーション力は最適なツールとして機能します。

高スピードで直感的に伝えるビジュアルコミュニケーション

スマホやSNSでのコミュニケーションの中心はテキストからビジュアルに移りつつあると思います。もちろん言葉も使っているわけですが、深い内容の文章は意味を理解するまでに時間が必要で、かつ読む人の読解力によって伝わり方にばらつきが生じます。優れたビジュアルであれば速いスピードで暗黙知を共有し、言葉だけではシェアできない細かなニュアンスを含めて深い理解と共感を得ることが可能です。

昨今では情報量の多い動画コンテンツを介したコミュニケーションも浸透しています。同じビジュアルでも動画はストーリーの時間軸や音楽でよりエモーショナルに訴えることができる機能的なツールです。しかし、ひとつの動画を見るには多かれ少なかれ時間がかかりますし、その間は強制的に視聴させられることになるため、グラフィックとは特性が異なります。

グラフィック広告では時間軸や音はありませんが、色や形から直感的に伝えたり無意識下にある記憶を想起させたりと、見る人の想像力によってその場にないものを補完させ、豊かなイメージを伝えることができます。例えば、文字もひとつのビジュアルだと捉えられます。言葉が持つ意味はもちろんですが、タイプフェイスをコントロールすることで、見ている人の中でその広告のある種、声色みたいなものをイメージさせることだってできるのです。またメディアの性格に合わせて可変しやすいのも特徴だと思います。

グラフィック広告は情報量が少ないからといって伝達力が劣るわけではなく、むしろ言語化が困難なブランドの要素を「一瞬で感じさせる可能性」を持っているといえるのではないでしょうか。商品ラベルを見て自分に合っているブランドだと感じた、飲み屋で見たコースターの飲料のロゴを見て味を思い出した、というようにリーズナブルで扱いやすいグラフィックは、その特性上、どんな場所でも商品や企業のことを感じてもらうことができ、ブランディングにとって有効な蓄積効果に貢献できると思います。

グラフィックを加速させる魔法 メディアとの掛け算を意識

ビジュアルコミュニケーションの特性として、速いスピードで言語だけでは伝わらない情報を届け、ブランドに対する共感を生むことができると書きました。しかし、ブランドからの発信にカスタマーが触れる時間もほんの一瞬だということを頭に入れておかなければなりません。一瞬しか見てもらえない、動かない、音も出ないグラフィック広告の力を最大化していくためにはどんな場所で見てもらうか、つまりはグラフィックが載るメディアとの掛け算が必要です。

1枚のグラフィックだけを見ていては本来の価値を最大限、発揮させることはできません。例えば、私が携わったJR東日本の「行くぜ、東北。」では1枚のポスターをデザインするという感覚ではなく、駅の景色をデザインするという気概で取り組みました。そう考えることで、生まれるアイデアに違いが出てくるのです。「行くぜ、東北。」の事例を通じて、駅というメディアを最大限に活用することの効果と、同じ場所に長期的に掲出することでポスターという平面的なものが場所と時間の概念を手に入れ、多面的になり得ることを実感しました。

図1 JR東日本 ポスター「行くぜ、東北。」

このように、そのグラフィックが掲出される場所、空間をイメージすることは重要です。それを踏まえて、私はグラフィック広告のアイデアを考える上で、常に意識していることがあります。

例えば渋谷の街中にOOH広告を出稿するとします...

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