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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

アフターコロナの動画コンテンツは 配信数やジャンルの幅広さが鍵

片岡弘貴氏(ナノ・ユニバース)

    動画コンテンツ企画・制作の極意

  • つくる動画の目的や用途を明確にし、適切な機材やソフトで制作を。
  • とにかくコンテンツを増やしてみることも重要。独自の知見を蓄積し、次の企画に生かす。
  • これからは情熱を持った強い「個」の時代、ライトな撮影と編集で、専門性の高いコンテンツを配信。

知識のない素人でも動画コンテンツはつくれるのか?

私が所属するナノ・ユニバースは2002年に創業したファッション・セレクトショップです。売上EC比率が45%を超えているという特徴があり、デジタルマーケティングに積極的に取り組む文化があります。そのような背景もあって、2014年よりコンテンツ強化のために内製で動画制作を行うチームが立ち上がることになりました。チームと言っても、立ち上げ当初メンバーは私ひとり。しかも私は動画制作の勉強や仕事をしていたわけではなく、ナノ・ユニバースにはグラフィックデザイナーとして入社しました。

しかし、店舗用の制作物を担当する中で、当時の社長から「店舗にデジタルサイネージを設置するから動画をつくって欲しい」という依頼があり、ポスターのグラフィックを動かして動画をつくりました。この経験が映像チームの立ち上げメンバーとなるきっかけに。約半年間ほどは、ひとりで試行錯誤を繰り返していましたね。

それが現在では、直営ECサイトで使用するイメージヴィジュアル動画の制作やYouTube番組の制作まで手掛け、チームメンバーのディレクションもできるようになっています。この原稿では、ここに至るまで私が実業務の中で学んできた、動画を内製する上でのポイントをお伝えできればと思います。

動画の種類・内容にもよりますが、当社では動画制作を大きく以下のワークフローに分けて行っています。

①企画、②ロケハン、③絵コンテ&香盤表作成、④撮影、⑤編集、⑥メディア最適化、⑦分析

今回は、この中でも「企画」「撮影」「編集」「メディア最適化」「分析」について、ポイントを解説していきます。

「企画」のポイント 潜在意識にとらわれずリサーチを

企画をする上で私が大切だと考えていることは、世の中から求められているコンテンツを知るために“事前リサーチ”をしっかりと行うことです。動画制作に携わったばかりの頃は、「とにかくカッコイイ映像をつくろう」ということばかり追求していました。しかし、その意識で制作した動画に対してユーザーからの反応はイマイチ。自分の中に「ファッションブランドは皆が憧れて、カッコイイ存在であるべき」という潜在意識があったことに気づき、自分と世の中との意識に差があるのだと痛感しました。

このままではブランドの自己満足で終わってしまうとの危機感から「どんな動画コンテンツが世の中で喜ばれているのか?」をリサーチするようになりました。私のリサーチ方法は、とにかく動画コンテンツを見ること。YouTube番組をつくる際は、ファッションに限らず、あらゆるジャンルのYouTubeチャンネルをリサーチしています。イメージヴィジュアルを制作する際は、感度の高い映像作品が豊富な動画共有サイト「Vimeo」を参考にしています。

「撮影」のポイント 画面の向こうにまで熱量は届く

次に撮影です。まずは撮影機材について。私がYouTube番組を撮影するときには、次の機材を使用しています。

●カメラ=3台
●三脚=3台
●ピンマイク=人数分
●音響ミキサー
●照明
●モニター

カメラについては、直営のECサイトでヴィジュアル重視の動画を撮影することもあるため、シネマカメラを購入して使用していますが、これからYouTube番組のような動画をつくる場合には、スマホがあれば十分だと思います。企画によって適切な機材は変わってきますし、各ブランドの表現したい世界観もあると思います。そこで、機材もどのような動画をつくりたいのか、という観点から選ぶ必要があります。

YouTube番組の本編収録時は事前に用意した台本をベースに進行します。スタッフはカメラマン3名、ディレクションと音声を兼任する監督1名の計4名。撮影で気をつけている点は、事前に「紹介アイテムをどのように見せるのか」「その際に必要な什器などはあるか」を確認しておくこと。事前準備が大切です。

構成においては、オープニングは短めにして、テーマを早めに発表することを心がけています。ユーザーは自分に関係がないと判断するとすぐに離脱してしまいます。メインとなるテーマを早めに提示し、ユーザーの興味を引くことを意識しています。また、撮影中に小さなトラブルが起こった場合も、基本的に撮影は止めません。やり直しを繰り返すと、演者もスタッフも熱量が下がり、リアクションが悪くなるからです。制作サイドが撮影の現場を楽しむことが重要。現場の雰囲気は画面を通してユーザーに伝わります。

イメージヴィジュアル動画撮影時のスタッフは、YouTube番組とは異なり、ディレクター1名、カメラマン1名、その他進行管理や補佐を行うスタッフが2名で構成されます。ディレクターが企画、撮影、編集を一貫して取りまとめるため、経験値が高まり、大きく成長できる機会になります。ディレクターが編集も担当するのは、一般的には珍しいかもしれませんが、撮影の時からどのように編集するかを考えられるので、ナノ・ユニバースの動画コンテンツの特色になっています。

図1 番組の収録風景

「編集」のポイント レギュレーションは最重要

撮影を終えたら、撮った動画の編集に入ります。

編集作業で行うことは...

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