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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本

生活空間を巻き込み広がる グラフィックの持つシンプルな強さ

國定勝利 氏(花王)

    グラフィック広告企画・制作の極意

  • 広告主・ブランド側はまず「ブランドの存在意義=(ブランドパーパス)」を明確にすることが重要。
  • そのグラフィック広告で何を実現したいのか、目的によって表現方法やメディアを使い分ける。
  • リアルとデジタルを組み合わせ、今の時代に沿った活用法を考えることで、グラフィック広告の可能性は広がる。

広告会社との会話の前にブランドパーパスを明確にしよう

私は長年、花王の広告作成部に勤める中で、さまざまな広告の制作に携わってきました。化粧品、洗剤、ホームケア商品など担当するブランド・商品においても、また、メディアの種類においても雑誌広告、店頭のボードやポスター、OOH、CMなど多岐にわたります。現在はクリエーティブディレクターとして、コミュニケーション全般や広告の企画などをしています。今回は、その中でも「グラフィック広告」に焦点を当て、広告主・ブランド側のクリエーティブディレクターとしてお話ができればと思います。

新しくグラフィック広告をつくることになった際、広告会社へのオリエンや打ち合わせの前に、ブランド側でまず行っておくべきなのが、「ブランドの存在意義=(ブランドパーパス)」を明確にすること。「このブランドは誰のためのものなのか」「人々の生活をどう豊かにするのか」を詰め、ターゲットや生活者価値をはっきりとさせておくことが重要です。

その上で、現在のブランドの課題や新製品の特徴などを整理すると、依頼する際の要望も明確になり、「何も伝わらない」「メッセージが感じられない」などといった広告になることを防げると思います。

どの広告会社と組むのかも、つくろうとしている広告の目的や課題によって異なります。ブランドとの付き合いが長く、よく私たちのことを理解してくれている会社とは信頼関係が築けているので、今回の広告におけるこちら側の意図を伝えれば、期待していたものをつくってくれる安心感があります。

逆にこれまで付き合いのあまりない新しい会社には、ブランドが何か課題を抱えている場合、その課題を解決するような新しいアイデア、クリエイティブジャンプが期待できます。どちらと組むのにもメリットがあります。そのため、この点でもブランド側が課題や目的を明確にしておくことは必要です。

また、組みたいと思うクリエーターは、やはりブランドに愛を持ってくれる人が良いと思います。ブランド側である私たちと同じ方向を見て、力を尽くしてくれる人と仕事がしたいという点では、付き合いの長い会社でも、新しい会社でも共通しています。愛を持って取り組んでくれるクリエーターを見つけることも重要ですし、逆に広告主側・ブランド側は、相手がブランドに愛を持ってくれるように、ブランドの魅力や熱量を伝える努力をするべきだとも言えるでしょう。

見る人の状況を考え適切なコミュニケーションをとる

グラフィック広告とひとまとめに言っていますが、グラフィック広告にもポスター、新聞広告、雑誌広告、OOHなど、さまざまな種類があります。人々がそれぞれの広告に出会う時、どのような状態なのかを考えて制作をすることも重要です。

新聞広告や雑誌広告の場合、その広告を見るのは、新聞や雑誌を「見よう!読もう!」というモードで主体的に情報を得ようとしている人です。そのような人には、比較的細かく丁寧にメッセージを伝えても、読んでもらえる可能性は高いでしょう。

しかし、通勤途中に見かける駅構内に貼られたポスターなどは、立ち止まってゆっくり見てくれる人はほとんどいません。その代わり、短い時間でも毎日、繰り返し目にしてもらえる可能性は新聞広告や雑誌広告よりも高いです。そのような場合は、読み込まなくても視覚的に印象に残るような工夫が必要。どのようなメディアに掲出するのかにより広告の構成を検討することは、広告を制作する上では基本であり、重要です。

認知拡大から購買促進まで掲出場所やメディアの使い分け

ここまで企画・制作時におけるポイントなどをお話ししましたが、“グラフィック広告”というものが持つ効果についても私の考えをお伝えしたいと思います。

グラフィック広告の効果のひとつに、街や電車内など、人々の生活空間をジャックして、空間ごと巻き込む、ある種の“お祭り感”のようなものを演出できるということがあります。私が携わった仕事で洗濯用洗剤「アタックZERO」のOOHをSHIBUYA109渋谷に掲出したことがあるのですが、その時はこの“お祭り感”、「あのブランドが、こんな取り組みをしているんだ!」という話題性や認知を狙ってのことでした。

今の時代、ほとんどの人がスマートフォンから情報を得ていると言っても過言ではないでしょう。ただ...

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