近年、国内においてもマーケティング部門の新設や、専門人材育成に動き始める企業が増えている。しかし米国では、従来のマーケティングでは捉えきれない新たな概念が生まれているという。高広伯彦氏が考える「マーケティングの未来」とは?
米国企業で始まったマーケティング部署の解体
「マーケティングとは、顧客、クライアント、パートナーそして社会全体に対して価値のある提供物を、生み出し、伝え、届け、そして交換をするための活動であり、制度でありプロセスである。」これは、全米マーケティング協会によって2013年にまとめられた、現在におけるもっとも公式な「マーケティングの定義」である。おそらくマーケティング業界の関係者は、この定義を"再定義"しようとするだろう。
しかしながら、そもそもマーケティングというものが"消える"運命にあると想像することができるとしたら、それを"再定義"することはできず、マーケティングそのものを"解体"し、企業全体のビジネスプロセスの中に組み込み、"再構築"しなければならないのではないか?という考えにたどり着くのではないだろうか。そしてその兆しは今年になってより顕著な動きとして現れてきている。
今年7月、米国のビジネスメディアの経済面そして広告業界メディアで、大きな時代の変化を表すような記事が掲載された。マクドナルド、Uber、ジョンソン&ジョンソンといった企業のCMOが辞任ないしは降格し、その後、各社は代わりの人物を置くこともせず、より大きな変更として「マーケティング」に関する部署の解体ないしは再構築を目論んでいるということであった。そしてまだ表立っていないが、すでに同様の動きをしている日本企業が出てきている。
一時はCMOという職はある種の花形だったように思う。しかしながら、「CMOの在任期間」が年々短くなっているという記事を目にするようになるなど、必ずしも"マーケティング業界"で認識されているほどには、その役職はよいポジションではなくなってきたのだろう。
今の仕事の延長線上にはない?マーケティングの未来の姿
この「CMO職の廃止」、「マーケティング部署の解体・再構築」の背景には、次の2つの流れがあるように思う。1つ目は、「マーケティング×テクノロジー」、2つ目は「顧客体験目線での組織の再構築」である。
「マーケティング×テクノロジー」、いわゆる「MarTech」は、広告系プラットフォームだけでなく、DMPやCDP(カスタマーデータプラットフォーム)、CRMやカスタマーサポート、セールスなどとの連携も含まれる …