今月のテーマ:コピーライティングの基本
ブランドに対する"共感"がマーケティング戦略上の競争軸となっていく一方、ますます価値観が多様化する時代においては生活者のインサイトを捉え、さらに共感を生むことは容易ではありません。共感を呼び起こすインサイトの捉え方、そして広告として機能するコピーを制作するポイントやノウハウについて、第一線で活躍するプロフェッショナルが解説します。
- いきなりコピーを考えない。コピーを考える前に、まず「何を考えればよいのか」を考える。
- 「何を目的に」→「何を言うか」→「どこで」「誰に・誰が」→「どう言うか」は基本。しつこく検証作業を繰り返す。
- オリエンでは「ぜんぶ聞く耳、疑う目」を意識し、何が"本当"の課題なのかを見極める。
機能するコピーを書くためのポイント
さて、質問です。いきなりコピー、書いてませんか?
ずばり。コピーを書くコツは、いきなり書き始めないことです。『いきなりコピーを書かない』と紙に書いて、机の前の壁に貼っておいてほしいくらいです。コピーを書く、その前に考えないといけないことがあります。「いや、一生懸命考えてますよ!」と言われるかもしれませんが、頑張っているのにうまくいかなかったり、必死で書いているのにぐっとこない場合なんかは大抵、コピーやCM企画を(いきなり)考えてしまっているんじゃないかと思います。
実は僕もそうでした。オリエンシートとにらめっこしながらMacに向かってコピーを(いきなり)ウンウン考える。ネットで探してなんかピンときたビジュアルをパワポやワードに貼り付け、言葉やセリフを(いきなり)ぐりぐり考える。なまじそれっぽいカタチになる分だけ要注意です。
コピーや企画コンテは、あくまでも最終的なアウトプットの表現です。そう考えて、考える前に考える。では何を考えればよいのでしょうか。
広告の(コピーの)目的は、「知ってほしい」「買ってほしい」「好きになってほしい」。ほかにも「来てほしい」とか「考えてほしい」とか色々ありますが、大きく方向は同じで『振り向いて関係を持ってほしい』わけです。
そのために、何を考えればよいのか。それは、「何を考えればよいのか」を考えるのです。禅問答みたいですが、つまりは①目的(何を達成すればよいのか)と、②そのために何を言えばよいのか(何が伝われば達成できるのか)、そして③そこに立ちはだかる課題(何が超えるべき壁なのか)をコツコツちまちまと、広く深く考える作業が必要なのです。
この作業は行ったり来たりを繰り返す、暗くて辛い道のりです。穴を掘っては行き止まりにぶち当たったり、掘り進んだ穴の先には先人がいたり、抜けた!と思ったら全然違う目的地に出てしまっていたり…の繰り返し。
でも道中、あっ!と道と道がつながったり、別の横穴なんかを発見したり、時に運よくアイデアの種らしきものを掘り当てられたり、そんな小さな快感・成功体験を糧に、掘り続けるしか道はないように思います。穴も掘らず、種も見つけず、果実だけを収穫するのはムツカシイのです。
コピーライター養成講座やコピーの教科書などで何度も出てくる「何を目的に」→「何を言うか」→「どこで」「誰に・誰が」→「どう言うか」は、やはり基本です。
とはいえ、実際にはコピーをポンと思いつく時もあります。その時でも、順番は前後しますが、これを言うことで何が伝わって目的は達成できるのかをしつこく検証します。日頃から、「これはなんでこうなのだろう?」とか、世の中の気分とか抱えてる問題なんかを自然と考えるクセがついてきて、慣れてくると、先ほどの作業を全部同時にやっていく感覚みたいなものもあるように思いますが。はじめのうちは、意識して順番にやってみてはどうでしょうか。
あと、手書き。ノートを使うのがおすすめです。僕の場合、具体的には仕事ごとにノートを1冊用意して、考えたことをなんでもかんでも書き散らかしていきます。考えた道中がまた考えを生んでくれるし、書きながら考えることで、まだ言葉にできていない「何か」を意識することもできる。"活字にすると、なんでもコピーっぽくなっちゃうかも問題"も解決できます。走り書きでも、いいコピーはいい。
何が"本当"の課題なのかを徹底的に見極める
オリエンテーションの時に大切にしているのは「ぜんぶ聞く耳、疑う目」を持つことです。標語みたいですが、まぁ言葉通りの意味合いです。これは紙に書いて机の前の壁には貼らなくてもよいかと思いますが(笑)、オリエンテーションを聞く時から、「何を達成すればよくて、そのためには何を考えればいいのかな?」という目線で聞いてみるとよいと思います。そして「何が"本当"の課題なのか」が発見できれば、コピーを生み出す大きな力となるように思います。これはオリエンシートには書かれていないかもしれません。
オリエンを受けたら、次にやることは何でしょう。まずインターネットで検索?ですよね。インターネット、便利ですよね!(笑)。僕もよく使っていますインターネット!でも、検索結果の上位やSNSの世界はある意味、誰かが編集してくれた後のものと考えると、偏ったひとつの正解、インプット情報としての画一化が気になります(僕は)。大いに参考にしながらも「何が"本当の"課題なのか」をどうにか発見したい。
で、あえて意識的に原点回帰、つまりは「行ってみる、買ってみる、やってみる」をしてみる。たとえば売り場に陳列されている商品を実際に見て、ライバルを直視し試してみる。いち消費者として見えてくることはないか。世の中と商品とを自分の目でじっくりと見て、自分の毛穴から吸収できるものは何かないか、と考えるわけです。
「週末、実際に売り場に行って競合商品もぜんぶ食べ比べてみたんですけど…」と言う若きコピーライターAさんと、「ネットで調べたらこうらしいですよ」と言う若きコピーライターBさんがいたら、Aさんの言うことを聞いてみたいと思いませんか。
どうしてこうなった?赤城乳業、キンチョーの事例から
「そのようなプロセスでコピーを考えていて、なぜこうなったのか」、と叱られるかもしれませんが、僕が携わった仕事の事例をいくつか。ひとつめは赤城乳業のsof’(ソフ)という商品です(図1)。牧場のソフトクリームのあの美味しさとか、手軽に食べられるとか、ワクワクした気分とか、色々ある中で、端的に商品を「言い当てて」、まるで今までなかった感、それは試してみたいぞ感を狙いました …