ディスラプターやスタートアップ、さらに世界のメガブランドまでが実践する「パーパス・ブランディング」。なぜ今、世界中から注目されているのか。そして、その正体、仕組みとは何なのか。パーパスの力を生かし、ブランドをエレベートするための知見を全6回で解説する。
パーパスを掲げる「ジレット」セクハラ問題に一石を投じる
2019年1月、P&Gの男性用カミソリブランド「ジレット」が公開した動画広告が大きな話題を巻き起こした。「We Believe」というタイトルの動画広告は瞬く間にSNSで拡散され、消費者の中でその賛否が分かれた。
その広告で「ジレット」は、製品の機能性については一切語っていない。#MeTooムーブメントを背景に、世の男性たちにイジメとセクハラが横行する現状について訴えかけた。「Is this the best a man can get?(このままで良いのか、これが私たち男性ができるベストなのか?)」と強く問いかけたのだ。
「ジレット」が掲げるパーパスは「Help men make a difference in their world(男性が世の中を変えるための手伝いをする)」だ。「ジレット」はこのキャンペーンを通じて、彼らのブランドを違う次元にまで底上げしようと考えたのだろう。今の時代に合った男らしさ、そのあるべき姿の視点を持って、ブランド・パーパスを消費者が関心を持つ社会問題に結びつけたのだ。
この動画広告はSNS上で炎上するも、一方で「ジレット」は熱狂的なファンも増やした。広告の話題性だけにとどまらず、顧客のブランドに対するロイヤリティは向上し、競合から機能価値とは異なる、新たなポジショニングを獲得した。「ジレット」はブランドとしての差別化に成功したのだ …