広告マーケティングの専門メディア

           

どう変わった?広告業界の働き方

クリエイティブに集中できないクリエイターの労働環境、制作の現場をどう改革する?

上坂 優太氏(Viibar)/呉 京樹氏(クリエイターズマッチ)

クライアントとクリエイターをクラウド上でマッチングするプラットフォームが普及することで、より効率的な制作環境が生まれようとしている。クリエイティブの効率化には、何が必要なのか。代表的なクラウドサービスを手掛けている2社の代表から話を聞いた。

(左)Viibar 代表取締役 上坂 優太氏
(右)クリエイターズマッチ 代表取締役 呉 京樹氏

―広告業界で働き方改革が進んでいます。こうした流れをどのように見ていますか。

上坂:広告業界の働き方が問われている背景には、広告がデジタル化する中で、キャンペーンが細分化し、現場の負荷が高まっている一方、従来のやり方から脱却できていないということがあると思います。たとえば我々が手がけている動画も、配信先のプラットフォームごとに複数のクリエイティブをつくったり、公開後にも効果を見ながら配信のチューニングを行ったりします。

このように作業が煩雑化することで、従来の手法が通用しづらくなり、業務フローを効率化していくことが業界全体の差し迫った課題になっているんだと思います。我々も今年4月に電通と資本業務提携し、まさに制作フローを効率化するための仕組みを一緒につくっているところです。

呉:僕はもともとゼネコン業界出身。日本の建築業界は、ゼネコンの下に工務店があり、さらにその下に職人がいるというピラミッド構造です。過去にはツケ払いが横行し、手形が現金化される間に工務店や職人の会社が潰れてしまうなど、その構造が破綻しかけたことがありました。広告業界に入ったときに感じたのが、その構造が建築業界とまったく同じだということ。クライアントを頂点に広告会社、制作会社、フリーとヒエラルキー構造ができている。最近、広告業界の働き方が問われているのも、この構造に限界がきているからだと思います。

―広告の制作現場では、具体的にどのような問題が起きているのでしょうか。

呉:やはり、さきほど上坂さんが指摘したように、制作物の数が増えたということが一番の問題でしょう。僕が会社を立ち上げた10年前、Web上の主要メディアと言えばヤフーやMSNぐらいで、月間のバナー広告制作本数は数十本という世界でした。しかし今は、どの広告会社も月に数万本ものバナー広告をつくっています。純粋に仕事量が増えたため、対応しきれなくなっているのです。

さらに5年ほど前に、当社のディレクターやパートナークリエイターが仕事中に何に時間をかけているのかを調査したところ「メールを見る」「電話を待つ」「ファイルを探す」といった直接的に生産に結びついていない時間が1時間のうち10分程度ありました。これは1年間に換算すると少なく見積もっても2カ月になります。結局、ピラミッド構造の中で一番下にいる人たちは納品日が動かないなか、上の階層の人の指示を待ち、最後は徹夜に追い込まれています。

上坂:そうですね。商流上、クライアントから制作会社までの間に、さまざまな関係者が入るため、最終的な制作者に情報がたどり着くまでに相当時間が掛かってしまいます。また、ベタな話ではありますが、広告業界はとりあえず打ち合わせを入れる文化があって、本当は必要のない人も会議に参加していることがある。こういうところにもクリエイターがクリエイティブに集中しにくい要因があると思っています。

―こうした状況を改善していくために、二人はクラウドサービスに着目したわけですね。

上坂:そうです。我々はクライアントと動画クリエイターをつなぐプラットフォームをクラウド上につくることで、従来の商流をスリム化しています。さらにシステムで制作フローの効率化をサポートすることで、質の高い動画を効率的に提供しています。これが私たちのビジネスの根幹です。もう一つは、この制作フローのシステム自体を切り出して、広告会社や制作会社などに提供しています。

Viibarが提供する動画制作コラボレーションツール「Vync(ヴィンク)」。

呉:僕たちはバナー広告が中心ですが、基本的な仕組みは上坂さんと同じです。その根幹にあるのは、デザイナーの収益を改善させたいという思いです。基本的に収入は「時間×時給」で決まりますが、先ほど紹介したように1年間のうち2カ月も「待ち時間」があれば、その分、年収も減ってしまいます。

それならば待ち時間をゼロにする方法を考えようと『AdFlow』というサービスをつくりました。業務に対して、仕事ができる人たちの時間をクラウド上でブロックのように組み合わせることで、クリエイターの稼働率を限りなく100%に近づけていこうという考え方です ...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

どう変わった?広告業界の働き方 の記事一覧

博報堂の「働き方改革」はどのように進んでいるのか?
アサツーディ・ケイ、大広、JR東日本企画、東急エージェンシーなど大手4社の「働き方改革」を追う?
クリエイティブに集中できないクリエイターの労働環境、制作の現場をどう改革する?(この記事です)
働き方改革の本質は「働く時間」を価値あるものに変えられるか—山口周氏
AIで広告業界の仕事が変わるって、具体的にどんなこと?自動化が進む、最前線
36協定、残業代、労働時間の原則 広告業界の労務事情で知っておくべき基本
中川淳一郎さんが外資系クリエイティブエージェンシーの働き方に迫る!ライフワークバランスは完璧?
「広告業界の働き方改革」に必要な視点とは? サン・アド 取締役会長 久保田和昌氏に聞く
電通は「働き方改革」でも業界を牽引できるか
広告業界の長時間労働は、改善に向かっているのか?アンケート結果を公開
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する