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どう変わった?広告業界の働き方

働き方改革の本質は「働く時間」を価値あるものに変えられるか—山口周氏

山口 周氏(コーン・フェリー・ヘイグループ)

広告業界の働き方が変化していく中で、個人レベルではどのような考えで仕事に向き合っていけばいいのか。電通やボストンコンサルティングなどを経て、現在はコーン・フェリー・ヘイグループで企業の人材育成のコンサルティングなどを行っている山口周氏に聞いた。

広告業界は必要以上に悲観的になる必要はない

広告会社の社員が広告業界の先行きについて必要以上に悲観的になっている。私がコンサルタントとして、広告会社に人材育成や人事制度構築をお手伝いする中で感じていることだ。

広告会社の中心業務は、企業が世の中に対してコミュニケーションするためのサポートになる。私はその仕事がなくなることは、起こり得ないと考える。もちろんカメラのフイルムや蒸気機関、製氷業のように技術革新が起きることで世の中から消えていったり、減ったりする仕事・商品はある。ただし、企業が商品・サービスを消費者に届けいく必要がある限り、その支援を担う仕事が完全になくなることは想定しにくい。

一方で広告会社のビジネスモデルに変革が起きているのも事実だ。これまで企業と消費者のコミュニケーションの経路はマスメディアに依存しており、その広告枠を売買することで広告会社は高い収益性を維持してきた。それがインターネットの登場によって広告枠の数が劇的に増加し、相対的にマスメディアの価値が下落している。

また、日本のGDP(国内総生産)が大きく伸長しなければ、広告の総量も増えない。広告の総量が増えないにも関わらず、広告枠の数が増えれば単価が下落するのは必然だ。

広告業界で過重労働が発生しているのも、本質的なところではビジネス上で無理が起きているという理由が挙げられるのかもしれない。

必要とされる仕事となくなる可能性のある仕事

広告業界の仕事は、大きく分けると"頭を使って考えるクリエイティブな仕事"と、"メディア露出の管理のようなオペレーショナルな仕事"に分かれる。

先ほど言及したように、コミュニケーションの支援に対するニーズはなくならないため、企業のコミュニケーション戦略を立案する前者の仕事の価値は低くならない。しかし後者は、確実に機械に置き換わっていく。具体的には、テレビのスポットCMの線引きや、新聞でレイアウトを決めていく整理部、デジタル広告の出稿管理といった仕事は数年の内になくなるかもしれない。前者と後者の中間に位置するメディアプランニングのような職種であっても、AIに代替されていく可能性がある。

こうした転換は、広告業界の現状を分析すると確実に起きていくだろう。広告の総量が増えなければ、人件費も含めてオペレーショナルな仕事を効率化できなければ、収益性は改善しない。広告会社にとって生産性の向上が早急の課題なのだ。

つまり後者の仕事だけに携わっている人は危機感を持った方がいい。

ポートフォリオをつくり"筋の良い"時間を増やす

私はよく時間の使い方のポートフォリオをつくるようにアドバイスをする。社会人の生活は基本的に「仕事」「余暇」「睡眠」に分けることができる。それぞれに、どのぐらい時間をかけているか図式化し、その質が"筋の良いものか"を分析するように伝えている【図1】 ...

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