2007年から2016年まで8年半、サントリーホールディングスで宣伝部長を務め、現在はサン・アドで取締役会長の職に就く久保田和昌氏。日本アドバタイザーズ協会顧問、日本アド・コンテンツ制作協会監事、東京広告協会理事なども務め、広告主と広告業双方に精通する同氏に複数の視点で見た働き方改革のあり方、その方向性について考えを聞いた。
価値を届ける業務工程もブランド品質のひとつ
-日本アドバタイザーズ協会は今年4月、「働き方改善へ向けたアドバタイザーの行動指針」を発表。8月にはその指針で掲げられた取り組みのひとつとして日本広告業協会、日本アド・コンテンツ制作協会、日本広告制作協会の4団体による「広告ビジネスにおける『働き方』改革のための基本合意【図表1】」が発表されました。今後も4団体は継続的に円卓会議を行っていくそうですが、「働き方」改革における広告主の役割についてどのようなお考えをお持ちですか。
今回、広告業界で起きた問題が広告主にとって、どのような関わりがあるのか、自分事として捉まえることが求められていると思います。
そんな中、日本アドバタイザーズ協会の伊藤雅俊理事長(味の素 代表取締役会長)は「People First」という言葉を使われました。ここで言うPeopleとは広告界で働くすべての人のことです。ブランドの価値を伝え、さらにはお客さまに明るく元気になっていただこうと思って広告活動をしているのに、その広告に携わる人たちが疲弊していたら、価値など伝わるわけがありません。
広告主側の宣伝部はブランドの価値を磨き、そして伝えることに役割がありますが、その価値を伝える業務プロセスの品質も、またブランド品質であると理解すべきではないでしょうか。
また広告会社の労働環境で問題が発生した場合、世間は「なんの仕事で発生した問題か?」を問うでしょう。もし自分たちの仕事の中で問題が起きればブランド毀損の大きなリスクにもなります。広告業界の労働環境の問題は、広告主の問題でもあるという認識が必要と言えるでしょう ...
あと63%