- 企業の理念がどれだけ自分たちらしい言葉で「志」を表現しているか
- 企業がどんなキャラクターなのかをつかむには、創業者や企業の歴史をひも解くことが必要。
- 現在はどのような価値観が根づき、どんな企業文化を形成しているか、把握する。
コーポレートブランディングのここがポイント!
自分たちらしい言葉で表現された理念からすべてが始まる
「そもそもコーポレート・ブランディングとは何ですか?」そんな質問をいただくことがあります。Webで検索でもすれば、さまざまな見解が出てきますが、私自身は「いい経営そのもの」ではないか、と感じています。
もしも高級マンションを販売している会社があるとして、その営業スタッフがだらしない格好で現れたら。広告で伝えていることと、社員が話していること、経営者が考えていることがバラバラだったら。言っていることと、やっていることが違う人が信用されないのと同じで、その企業はきっと信用されないのではないかと思います。
「CI(Corporate Identity)」とは、「MI(Mind Identity=理念の統一)・BI(Behavior Identity=行動の統一)・VI(Visual Identity=視覚の統一)」の3要素で成り立つと定義されています。これは言い換えれば、企業の目的である理念がきちんと社内に浸透している状態。つまり理念を実現するために戦略が立てられ、一人ひとりが理念に則って行動し、そしてその行動の結果である商品やサービス、それを伝える広告などの表現物を経て、お客さまや世の中に正しく伝わっている状態。
コツコツと真摯に経営した結果、ブランドができ上がるということを、定義しているように思います。やはり、すべての出発点は理念。その言葉が、どれだけ自分たちらしい言葉で表現されているか、が大事です。
「志」を込めて理念を言語化する
それでは、具体的にどのようなステップで言語化するのか。前提として大切にしてほしいと願うのは、「志」を込めること。自分たちにしかできない社会への役立ち方を言葉にしてほしいと思います。「自分たちにしかできないこと」で、「社会に役立つ」わけですから、それは世の中に認められる、共感してもらえるものになるはずです。
従業員にとっても同じ。働いていれば、辛いときもある。そんなとき、「自分はこのために働いているんだ。それは自分たちにしかできないことなんだ」と心から思えたら、きっと乗り越えていける。社内のみんなが誇りを持って働くことができれば、雰囲気の良い会社になり、良い仕事が生まれます。良い仕事(商品・サービス)が生まれれば、お客さまにも喜んでいただける。ファンを増やすことができる。ファンが増えればまた、社内のモチベーションが高まりますし、会社も成長する。結果として、社内外から共感される強いブランドへと育っていく。そして永続的な繁栄につながっていく……といったようにプラスのスパイラルが生まれると信じています。
キレイごとに聞こえるかもしれません。けれども、せっかく本気でい良い会社にしようとブランディングに取り組むわけですから、理想を掲げて、何としても達成できるように泥臭くチャレンジする方がいいのではないか、と思っています。
脈々と流れるDNA 企業の"らしさ"をひも解く
さて、ここからはより具体的に、アイデンティティづくり(言語化・ビジュアル化)の流れについて説明していきます。企業も「法人」と言うように、「人格」があります。そこでアイデンティティづくりはまずは、その企業がどんなキャラクターなのかをつかむことからはじめます。その把握に際しては、創業者や企業の歴史をひも解くことが大切です。
創業から数々のドラマを経て「今」があります。どんな想いでここまでビジネスをやってきたのか、また大きな岐路に立たされたとき、どんな価値観で、どんな意志決定をしてきたのか。いわゆる「意志決定の基準」を明確にしていく作業を通して、その企業「らしさ」や「強み」を浮き彫りにし、言語化の土台とします。
一方で、現在はどのような価値観が根づき、どんな企業文化を形成しているか、把握することも大切です。社員の「メモリアルワーク」から分析する方法は、そのひとつ。いわゆる良い仕事、武勇伝ですね。お客さま(や世の中)から評価された仕事について、「どんな想いでどんな行動をしたから」得られた評価なのか、振り返り、言語化します。事業部ごとに若手、中堅、ベテランと階層別に実施することで、共通になっている価値観や、これから大切にしたい価値観が見えてくることが多いです。
どんな要請に応えるのか どんな未来をめざすのか
「らしさ」や「強み」が見えてきたら、理念の中心とも言える「使命」を考えていきます。ポイントは、さらに視座を高くすること。どんなに世の中が進歩しても、常にたくさんの課題があります。自分たちは世の中のどんな課題を解決しているのか、これから解決し得るのかを探り、その接点を見つけていきます。事業が多岐に渡っていて、接点を見つけにくい場合もあるかもしれません。そんなときはぜひ、創業のきっかけを読み解いてください。そもそも何を果たすために生まれた会社なのか、ルーツの中から見えてくることもあります。
次に、その使命を果たした結果、「どんな未来をめざすのか」を定義していきます。10年後、20年後、30年後と時間軸をつくって、自社がどんな変化をするか、それは社会にどんな変化を起こしていくか、想像を巡らせてホワイトボードに書き出したり、付箋で貼り出してみるのも良いでしょう。具体的にイメージすることで、方向感を捉えやすくなります。
ちなみに、こうしたアイデンティティ開発はプロジェクトチームで進行することをオススメしています。経営陣でチームを組めば、より強固な経営陣になるためのチームビルドに役立ちますし、若手リーダーを入れれば後継者育成にもなります。どんな経緯・想いでつくられたのか、その背景をしっかり理解することで …