インタラクティブでエンタメ性ある「ゲーム」が広告の可能性を拓いていく
絵画からキャリアを始め、3DCGや現代アートで社会課題に挑むアーティスト、藤嶋咲子さん。「バーチャルデモ」ではSNSの力を可視化し、「WRONG HERO」ではジェンダーバイアスへの問いをゲーム形式で表現するなど、新しいアートの形で人々の抑圧された声を浮かび上がらせている。広告やメディアが抱える課題に対しても、独自の視点を投げかける。
私の広告観
「マンガ家」という肩書きを持っているが、その活動を見れば、マルチクリエイターである。「コップのフチ子」を大ヒットさせたかと思えば、「サウナ大使」に任命されたり、趣味の「水草水槽」の普及にいそしんだり。全方位に独自のアンテナをはりめぐらせているように見えるが、この3つ、実は根底でつながっている…のかどうか。
マンガ家 タナカカツキ(たなか・かつき)
1966年大阪生まれ。1985年マンガ家デビュー。映像作家、アーティストとしても幅広く活躍。著書に『オッス!トン子ちゃん』『バカドリル』(天久聖一との共著)、『サ道』『水草水槽のせかい すばらしきインドア大自然』『部屋へ!』など。2014年10月に新刊『みんなの太陽の塔』発売予定。
タナカさんが原案の「コップのフチ子」は650万個の大ヒットを記録した。
©タナカカツキ/KITAN CLUB
たとえタナカカツキさんの名前は知らずとも、「コップのフチ子」と聞けば、イメージが浮かぶ人は多いだろう。2012 年発売の大ヒットカプセルトイ(ガチャガチャ)で、最近では様々な企業のプロモーションも使われるなど、広告コミュニケーションの世界でも活躍中だ。
フチ子のアイデアは、タナカさんが愛してやまない、ある場所で生まれた。「僕は年間300日以上、サウナに通っていて、仕事もほぼサウナでしているんです。カプセルトイメーカーの奇譚クラブさんから新商品アイデアの依頼を受けたときも、サウナに入りながら考えました。脳内で空想のガチャガチャを回し、『あ、これ面白いやん』という案を100個くらい考えて。そこから実現可能性のある10案に絞りこんで提案しました」。
こうして生まれたのがコップのフチ子である。奇譚クラブの企画会議では、「コップのフチに引っかける」という新しいアイデアだったことと、「男女共に受け入れられそう」という2点が商品化の決め手になったという。
カプセルトイ市場では、10万個売れればヒット、20万個以上売れれば大ヒットと言われる。その中で、累計650万個以上というのは規格外のメガヒットである。タナカさん自身は ...