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私の広告観

究極の「広告」は、記憶である。

暦本純一(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究者)

マーシャル・マクルーハンは自身のメディア論の中で「テクノロジーやメディアは、人間の身体の拡張である」と唱えました。暦本純一さんは、コンピュータテクノロジーを活用して「人間の能力の拡張」を実現しようとする研究者のひとり。暦本さんが見据えるテクノロジーの進化で実現する広告の未来とは。

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暦本純一(れきもと・じゅんいち)
86年東京工業大学理学部情報科学科 修士課程修了。日本電気、アルバータ大学を経て、94年よりソニーコンピュータサイエンス研究所に勤務。99年より同インタラクションラボラトリー室長。07年より東京大学大学院情報学環教授。PlaceEngineやAR事業を核とするベンチャー企業・クウジットの共同創設者。理学博士。

コンピュータテクノロジーを活用して、人間が持つ力を引き出す。人間の能力を拡張する...「ヒューマン・オーグメンテーション」に興味を持つようになったきっかけは、子どものころに読んだ漫画『サイボーグ009』です。その後、高校生の頃には、“パーソナル・コンピューティングの父”と呼ばれるアラン・ケイの記事を見て、彼の考え方や取り組みに感銘を受けました。コンピュータを使って個人の活動を支援する。自分もそういうことをやってみたいと思い、この道を進むことを決めました。

大学に入学した1980年代は、コンピュータ自体がまだ発展途上。DOS(Disk Operating System)に始まり、ビットマップが登場して、WindowsやMacが出てきて...と、まさにその発展のプロセスとともに歩んできました。当初はグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)、あくまでコンピュータの画面の中のUIについて研究していて、『サイボーグ009』に直接つながるような内容ではありませんでした。「実世界指向インターフェース」、つまり現実世界での人間とコンピュータとの関係性を研究するようになったのは90年代になってからです。もともとやりたかったことに、技術がようやく追いついてきたと感じています。

気づいていない不便を見つける

広告業界でも活用されているAR(Augmented Reality:拡張現実)の研究を始めたのは1994年頃、「NaviCam」と名づけたプロジェクトでした。今で言うモバイルARの仕組みを、その時あった技術を使って構築したもので、液晶テレビにカメラを取り付けて、そこからビデオケーブルを引き、大きなワークステーションにつなげました。「世の中を透かして見た時に、コンピュータの情報を一緒に見られたら、その人の知識を拡張できるのでは」というアイデアを、実際にシステムを組んで実現してみたのです。

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