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訪れたくなる!観光を促す技

旅インフルエンサー・くぼたびらに聞く、行動を促す”動画づくりの3ステップ

たのしむこころ 窪 雄貴,クリエイター・インフルエンサー くつざわ

TikTokやInstagramのリール機能などのショート動画が、地方自治体や地域の企業などが若年層を呼び込むプロモーション手法としても注目されている。この潮流の起点となったのは、旅行系インフルエンサーの存在だ。旅で足を運んだスポットを紹介する動画を投稿するや、観光客が殺到、一夜にして人気スポットとなるケースも見られる。流れを捉え、地域の魅力を伝える地方自治体運営のSNSアカウントも出現している。

しかし、動画制作に馴染みのない担当者にとって観光PRに動画を活用するのはハードルが高い。インターネット上に数多ある動画の中から視聴してもらうのすら簡単ではないのだ。そこで今回は、地方自治体や地域の企業と連携した観光PRに知見のある2人のインフルエンサーに「その土地に足を運ばせる動画制作」のポイントを解説してもらった。動画を自ら制作する際、またインフルエンサーを起用する際に参照し、地域活性化を図るヒントとしたい。

ナビゲーター

たのしむこころ代表取締役
窪 雄貴 氏(くぼたび)

年300日ほど旅する夫婦クリエイターくぼたび。各種SNS(YouTube、TikTok、Instagramなど)にて観光・ホテル・スポット情報を中心に、ショート・ロング動画を発信。アカウント開始から3年で総フォロワー220万人超え。「47都道府県、すべてを主役に」をビジョンに、地域おこしに力を入れて活動している。自治体と連携する観光PRが得意。自治体SNSアカウントなどのコンサルティングも行う。

クリエイター・インフルエンサー
くつざわ 氏

地元千葉でフリーランスとして活動。令和元年よりSNSを通して動画を発信。執筆なども始め10万人程のフォロワーが集まる。その後SNSを中心に広告やマーケティング施策、観光業の広報施策、サイト制作やブランディングなど幅広く手がける。また、インフルエンサーとしてX(旧Twitter)でエッセイや記事執筆、動画投稿などを行う。趣味は釣りと愛犬の散歩。「情緒を具現化」した動画制作、記事執筆に定評がある。

STEP 1企画づくり

動画制作のファーストステップである企画づくり。動画の構成を漠然と決めるのではなく、誰に何を見せるために、どんな動画にするかを綿密に定めることが重要だ。その具体的な方法とは。

地元の採れたて野菜なら食感を訴求、
ユーザーの関心捉えた魅せ方を
窪(くぼたび) 氏

─企画づくりで意識していることは?

最重視しているのは自治体などのクライアント、視聴者、そして私たち自身の「三方よし」の動画づくり。例えばクライアントの要望であっても、「PRしてほしい」内容が今のSNSにマッチしない、私たちの発信する世界観と合わないと視聴者に敬遠されます。またPRに偏りすぎた内容も同様です。認識のすり合わせをしながら別の切り口を提案することもあります。私たちの世界観にフィットした動画で視聴者に支持してもらってはじめて、「その地に足を運んでもらう」というクライアントの要望に添うことができるのです。

─視聴者に実際に足を運んでもらうために、心掛けている点は?

アカウントのコンセプトに「47都道府県、すべてを主役に」と掲げているように、地域ならではの魅力が、視聴者(SNSのユーザー)にきちんと“伝わる”企画を提案しています。そのためには、ユーザーの関心にフィットするよう「魅せ方」を工夫すること。例えば、地域で採れた新鮮な野菜をアピールしたい場合、そのまま新鮮と伝えるよりも「しゃきしゃきの朝採れ野菜」と食感を訴求した方がユーザーの心に刺さることもあります。

─視聴者の関心を捉えるには?

日々、SNSトレンドをキャッチアップすることが重要です。しかしSNSユーザーの関心は移り変わりが早く、1週間後には全く別のコンテンツが流行っていることも。最新トレンドをいち早く捉えるために、SNSに限らずニュースやプレスリリースなど様々な媒体に常々触れるようにしています。特に私たちはクリエイター意識を高くもって、ほかのアカウントなどの企画を模倣せず、常に新しい表現をつくり続けたいという自負もあります。夫婦で日夜ブレストを重ね、「地域の魅力がより伝わる」独自の表現方法を模索しています。

動画で擬似体験をした人に
「もっと五感で感じたい」と思わせる
くつざわ 氏

──企画づくりで意識していることは?

動画制作の前に「何を解決したいのか」「それには何が最善策か」から認識することを大事にしています。そのため動画制作といった単発の業務ではなく、企画の根本から携わらせていただけると、形にしやすいと感じています。実際に動画制作に関する依頼の多くは「若年層などSNSを使う層に認知してもらい、その地域に足を運んでもらう」ことが目的でしょう。しかし、クライアント側が提案する企画と、観た人が「足を運びたくなる」企画には乖離があるケースも多い。そこで「何をどう見せるか」の部分から視聴者の視点を踏まえて動画をつくっていくことが重要です。また「その地に足を運びたくなる」気持ちを誘発できるよう、魅せ方も工夫しています。例えば自治体が見せたいものとして、グルメや温泉などが挙がりますが、それらは多くの観光地が持っているもの。綺麗に撮影するだけではよくある資料映像、広告映像でしかなく、足を運びたくはならないのです。

──視聴者が「足を運びたくなる」企画づくりとは。

視聴者に、その地域の魅力の一部を疑似体験させることです。実際の体験に近づけつつも、本当に体験したほどの満足感は出さず、どこか完結させないことを意識しています。そもそも短い動画の中で地域の魅力を全て伝えることはできませんが、中でも「動画を通じて疑似体験させられる」シーンをピックアップします。すると、尺が短い分「もっと観たかった」と視聴者の心に引っかかります。また動画だと視覚と聴覚でしか味わえないため、「五感で感じたい」と思わせれば、足を運ばせることにつながると考えています。

STEP 2撮影

企画を決めたら次は撮影だ。特に、地域に足を運んでもらう動画撮影に重要なのは「演者が純粋に楽しむこと」と2人のインフルエンサーは口を揃える。その意図とは。

演者が純粋に楽しんでいる時に
漏れた言葉こそが視聴者の心に刺さる
窪(くぼたび) 氏

─撮影時に重視していることは?

演者である私たち自身がその地域やスポットでの体験を「全力で楽しむ」ことです。私たちのアカウントでは、本当におすすめしたい地域や体験しか紹介しないことを一貫して心掛けており、それがフォロワーに支持いただいている一因だと考えているからです...

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