風評被害の影響が大きい観光領域。処理水の海洋放出を受け、疑問や不安に対処する発信についても改めて関心が高まっている。これまで風評対策に取り組んできたいわき市では、情報を積極開示し、生活者が自ら判断できる施策に注力してきた。
東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が8月24日始まった。放出完了までは30年程度と長期におよぶ。観光客に限った話ではないが、安全・安心に対して不安を感じる生活者に対し、情報の受け手目線に立った、正しく伝わる、信頼回復につながる発信のあり方が、問われている。これまで風評被害と向き合ってきた自治体では、どのようなタイミングでどのようなコミュニケーションを行ってきたのか。福島県いわき市の取り組みを振り返っていきたい。
「見せます!いわき」
いわき市は2011年、東日本大震災東 からの復興と原発事故の風評被害対策を目的に、「いわき農作物見える化プロジェクト “見せます!いわき”」をスタート。放射性物質等の検査結果や、生産者の取り組みについて、サイトでの発信を開始した。加えてテレビCMを放映。約1000名の農業関係者が「見せます!いわき」とプロジェクト開始を宣言する内容だった。
「当時は、経験したことのない原発事故に直面し、目に見えない放射性物質に、誰もが不安を感じていました。そうした中で、見える化プロジェクトは、放射性物質の検査体制や、測定数値、収穫された場所や野菜の種類などの検査結果、そして検査結果では伝えることができない農家の方々の想いや取り組みなど、いわき産農作物のありのままを『見える化』してきました。単に安全・安心といったイメージを打ち出すのではなく、生活者の方が自ら判断できるような材料を提供する仕組みをつくったことがポイントでした」と農林水産部 農政流通課長・大平佳広氏は振り返...