若い世代に向け観光を促す情報を発信するにはまず、どのように旅先が選ばれているのかについて理解しておきたい。デジタルネイティブ向けに企画・マーケティング事業を行い、自らもZ世代である今瀧健登氏に聞く。
同世代のレビューに注目
─Z世代はどのように旅先を選んでいるのでしょうか。
「Z世代」を1990年代後半から2010年頃に生まれた世代とすると、2023年現在では、中学生、高校生、大学生、社会人4、5年目ぐらいの人たちが該当します。年代としては「若者」のため、観光地選びの前提として「旅行経験が少ない」という特徴があります。「この国とこの国は行ったことがあるから、次はここに行きたい、この国はもう一度行きたい」といった選び方はしていない、ということです。また「卒業旅行を楽しみたい」といったイベントに紐づいた観光が多くあります。社会人の場合も「大学の友だちと久しぶりに会いたい」「仕事が忙しい中でちょっと休みたい、でもまだ有給休暇は少ない」といった心境です。
では旅行経験が少なく「デジタルネイティブ」であるZ世代にとって「最初に行きたくなる旅先」はどこなのか。情報として信頼を置いているのは「友だちが『行って良かった』と言っている」ところです。友だちがSNSでアップしたことで、旅先について知ることも多くあります。40代、50代のレビューだと自分事化しにくいので、「Z世代目線でレビューが蓄積されている場所」であることが、旅先選びのポイントと言えます。
TikTok→Google検索
例えば「北海道に行ってみたい」となったとして、まだ行ったことがない人にとっては、どんな観光エリアがあるかは分かりません。そこで検索するわけですが、「北海道 おすすめ」とGoogle検索しても、「おすすめ〇〇選」といった情報が飽和し、広告記事もたくさん出てきて選ぶのが難しい。そこで映像で雰囲気が伝わる「TikTok検索」が使われています。YouTube上でも、場所をピンポイントで検索すれば欲しい情報にたどり着くのですが、TikTokなら「北海道 おすすめ」のような大きなくくりでもランダムに映像が出てきます。「どういう動画が上がっているんだろう?どんなレビューがされている?」と見ていくうち、「この宿(観光施設、飲食店など)に行ってみたい」と思うものが出てくる。そこを軸に「近くにこんな観光名所があるらしい」とGoogleで調べ、観光ルートを決める。こうした検索行動が起きています(図)。旅行ガイドで「札幌と函館」とエリアを絞り観光ルートを決めていく流れとは異なるのが分かると思います。旅先選びの軸となる「行ってみたいスポット」の探し方として、レビューやTikTokが重要なのです。また検索をしていなくても、普段TikTokを見て流れてきた「良さそうなスポット」の投稿を保存することもあります。

図 社会人2年目(Z世代)の観光地選びの例
最初の1秒が重要
─「この観光スポットについてもっと知りたい」と思わせるTikTokの動画とは、どのようなものですか。
パッと見た1、2秒で直感的にいいと思えるか...