ESG報告の温室効果ガス排出量や女性管理職比率などの数値情報の解釈基準は一律に存在しません。では開示情報からはどのような企業姿勢が読みとれるでしょうか。
ESG評価機関は、ESG投資の拡大とともに、その影響力が大きくなっています。また多くの機関投資家は、保有株企業のESG情報を注視しています*1。拡大するESG投資とあいまって、ESG情報を評価する機関やランキングは世界で600以上(2018年時点)になり、その後も増えています*2。
一方で、ESG評価に大きな問題が指摘されています。MITの研究者らによる調査*3では、主要なESG評価機関間の評価の乖離について、それぞれ共通のサンプルを用い、総合評価(ESG)と環境側面、社会側面、ガバナンス側面の相関関係を算出しています。その結果、平均の相関は0.61でした。一方、格付け大手のMoody’sとStandard & Poor’sの信用格付けの相関は0.99です。研究者らは、これを「集約的混乱:ESG評価の乖離」と呼び、乖離の原因として ❶ESG活動の範囲 ❷評価項目の重み付け ❸測定範囲の3つの違いを挙げています。