新市場への参入、社運をかけた新製品の投入、SDGs関連施策で企業イメージ向上を強化……幅広い層にアテンションを与えたい時にこそ注力したいテレビPR。いざ、テレビ取材を誘致できたら、どうしたらいいのか?
まず取材の誘致にあたり、私たち広報担当が認識しなければならないのは、テレビや全国紙などに代表される大手メディアは「社会の事象」を取り上げるのがミッションである、ということです。つまり特定企業の行動に最初からフォーカスするのではなくて、仕事や生活に影響を及ぼすパラダイムシフトや新しいトレンドを裏打ちする「社会の事象」の一例として、旬な企業活動にスポットが当てられます。幅広い層が視聴するテレビで“お茶の間”の関心を引きつける上でも、自社の話題が「社会の事象」と認識されるような見せ方が必要です。
旬の把握で取材を誘致
そのためには、国策を含めた社会全体に影響を与える予定から逆算した話題作りが最も有効です。例えば法改正。日頃の報道には法規制の改正や、新法の施行、税金等に関する施策(消費増税、減税、各種補助金)に絡むものが多いことにお気づきの方も多いと思います。これは偶然ではなくて視聴者の関心を引きつけることを狙ったメディアの特性で、政府や自治体が定めた施策の予定に合わせた取材活動を日常的に展開しています。
この特性を逆手に取ると、法改正などの施策に関する予定は予算の概算要求などを通じて1年ほど前には明らかになるので、未来の旬は予め把握することが可能です。予定している製品発表会等の文脈やコンセプトを、その時の旬に合わせたものに調整することで、テレビ局を含めた大手メディアの関心を引きつけやすくなります。
そして、旬な話題であることが的確に伝わる「取材案内」(図1)を作成し、メディアのハートを引きつけます。ニュースバリューの高い話題であれば、取材案内を記者クラブに投函することで繋がりのなかった新規メディア(記者)からの問い合わせも期待できます。
「なかなかテレビに出ることができない」という悩みを抱えているのであれば、メディアに発信する話題を、その時の旬に絡める工夫をしてみてください。これを効率よく実現するためには、開発中の製品・サービスの文脈やコンセプト作りに広報担当が関与することです。広報担当はメディアの関心ごとが分かっているので、テレビ局も扱いやすい「その時の旬」に絡んだ話題作りが継続的にできるようになってきます。
その一方で広報担当は、日頃の新聞等の報道チェックを通じて国家レベルの予定を把握し、テレビ局はどんな話題であれば取材してくれるか?シーズンごとにどんなテーマがホットになるか?についての理解を深めておかなければならないのです。
テレビ取材が決まったら
テレビからの取材依頼が来たら最初に行うことは、取材(収録)ではどんなシーンが撮影できればよいのかについて、テレビ局の担当者に改めて確認することです。放送時間(尺)は撮れ高に応じて決まるので、テレビ局のニーズには細部に至るまで対応できることが事前に確約できると、より大きな枠で扱ってくれる可能性が高まります。従って尺を確保するためには、①早めに取材案内を送付し当日の報道枠を確保(遅ければ遅いほど不利に)、②テレビ局のニーズには最大限対応する、③お茶の間の目を引くシーンを作り出す、という観点が重要です。
③の「お茶の間の目を引くシーン」のヒントとしては、まずはデモンストレーションです。テレビのニュースで扱ってもらうためには動きのあるシーンが必要になるので、製品発表会であれば実際にその製品を使っている様子を報道機関に公開する。事業提携の発表であれば、調印式やテープカットなどのセレモニーを行い、映像でも分かりやすく伝わる演出をしましょう。
また、カメラの前で説明する方も役職で順当に考えると中年男性になりがちですが、これでは平凡な映像になってしまい尺を確保する上では不利です。テレビに登場する社員は可能な限り、若者、女性、外国人、さらには子どもや高齢者の方などに登場してもらい、映像としてのユニークさが演出できるとお茶の間の関心がより高まることが期待できます。
また、せっかくの機会なので、若手の皆さんに敢えて登場してもらう方が、本人のモチベーションに繋がりますし、視聴者にも若い社員が生き生きと仕事をしている様子をお見せすることができるのではないかと考えています。
Q テレビ取材の依頼が来たらすべきことは?
☑「どんなシーンを撮影したいか」を確認
テレビ局のニーズに細部まで対応できれば、放送時間が長くなる可能性が高まります。
☑「目を引くシーン」を演出
発表会なら、製品を使う様子、テープカットなど「動きのあるシーン」が作り出せないか、考えてみてください。本番前に見せ場がどこか、メディアに前説することも忘れずに。
有効に事前告知をする
自社がテレビに登場することについて事前に告知してよいかどうかの確認も行っておくとよいでしょう。放送内容は戦略上重要な情報であり、個別取材の場合、放送されるまでオンエアする内容は伏せておくケースもあります。従って、取材を受けたからといって勝手に自社が登場することを口外することは危険です。
また、事前告知する時に役立つのが、撮影中の写真です。肖像権に配慮するために...