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OB訪問アプリ悪用に広報はどう対応するか?

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

OB訪問アプリ悪用に広報は?
就活学生と社会人をつなぐOB訪問支援アプリを悪用し、就活女性に乱暴した容疑で12月、リクルートコミュニケーションズ社員(別の準強制性交罪で起訴)が再逮捕された。

30歳のリクルートコミュニケーションズ社員は、OB訪問のマッチングアプリで知り合った20代の女子大学生に「就活用のPR動画の作成を手伝う」と持ちかけてホテルに誘い、わいせつな行為をした疑いが持たれている。同容疑者は11月に30代女性への準強制性交罪の容疑ですでに逮捕・起訴されており、再逮捕になった。スマホからは昏睡状態らしき女性を映した動画が数十人分見つかったという。

OB訪問アプリをめぐっては、2019年に大林組や住友商事の社員が同じような事件を起こしている。アプリは企業のリクルーター制度に関係なく個人が登録し、学生と直接やりとりするため外からは見えず、扱いに苦慮しているという企業も少なくない。今回は広報の立場から、対応を考えてみたい。

まるでコピペの声明文

リクルートとリクルートコミュニケーションズはHP上にコメントを発表したが、この声明文に問題があった。

まずタイトルは「当社の元従業員の再逮捕に関するお詫び」となっている。しかし、いつどのようにして「従業員」が「元」になったのかの情報がない。また本文には「このような事態を二度と起こさないよう、社内教育の徹底等の再発防止策に努めてまいります」としているが、具体的に何をどうするかの記述が全くない。スマホから数十人分の余罪を疑わせる動画が見つかったという注目度の高さに対して、これではあまりにも情報が少ない。

ポイントは、OB訪問アプリ悪用の事件はこれが初めてではないこと、そして容疑者が勤務していたのが、採用をコア事業とするリクルートだということだ。通常以上に世の中から厳しい目で見られることは明らかだが、声明文はなんと住友商事が2019年3月に出したものに酷似していたのだ。ほとんどコピペのような印象で、急場しのぎ感が強く、これまで対策を取っていなかったのかと大きな不安を与える。

社内でルールの見直しを

広報の役割として重要なのは、日頃から世の中の動向と自社ルールを把握しておき、必要に応じて社内にアラートを発することだ。今回のような事件は、自社の採用にからみ、またリスクもすでに認識されているもので、単なる個人の起こした問題とは言えない。

大林組は事件を機に「リクルート活動における行動規範」を制定、住友商事は、再発防止策として「OB・OG訪問対応時の実施要領」を定めている。ルールがあることが透明性の第一歩だ。ルールがあれば何が違反かを示すことができる。懲戒規程があれば規程で処分したと言える。

今回の容疑者はアプリに出身校を偽って登録していた。今後、第三者が自社の社員と名乗って悪用されるリスクも考えられる。また最近、社長と就活生のマッチングアプリなるものも登場して問題視する声が上がっている。既存のルールでこうしたリスクをチェックあるいは対応できるのか、この機会に見直しておきたい。

社会情報大学院大学 特任教授 ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学特任教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ60万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net/

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