2017年から政府がリストを公開するなど「ブラック企業」への風当たりは強まっている。社員の過労自殺で炎上したワタミで広報を支援し、ブラック企業アナリストとして知られる新田龍氏は、「健康経営」の間違った推進も「ブラック」につながる恐れがあると警鐘を鳴らす。
企業はなぜ世間から「ブラック」と呼ばれるのでしょうか。社内で当たり前と思っていることが、社外ではそうではないからです。広報が外に情報を出す前に違和感を覚えるかどうか、"常識人"としてのセンサーがあるかどうかは、鬼門になると思います。
例えば最近では、健康経営の取り組みとして、笑顔でないと登録できない「出退勤管理システム」や眠気を感知して刺激を与える「まぶた監視システム」などが話題になりました。SNSでは「笑顔の強制は感情の強制では」「眠い時は寝かせてあげた方が効率良い」などと批判の声が続出。皆さんの指摘通り、これらは何の解決にもなっていないと思います。
炎上する可能性はないか
広報担当者は、健康経営や働き方改革にまつわる自社の取り組みを発信する際に、炎上する要素がないかどうか、チェックをする必要があります。
ここでは「残業時間の多さ」という課題を例に説明しましょう。定時退社を促すために一斉消灯したり、会議室にポスターを貼ったりする事例は耳にしたことがあるかもしれません。しかし実際には、"仕事量は変わらないのに会社にはいられない"というジレンマに陥った従業員が、自宅に仕事を持ち帰るケースが増えています。これでは何の効果もないですし、裏事情が暴かれてしまったら「ブラック」と言われかねません。
ポイントは、はじめに「残業が発生する理由」を考えること …