オーラルケアなど健康関連事業を手がけるサンスター(大阪・高槻)は、"社員がまず健康であるべき"という考えのもと、いち早く「健康経営」を取り入れてきた。その象徴といえるのが、1985年に研究施設の敷地内に設立した福利厚生施設「サンスター心身健康道場」だ。
健康診断で特定保健指導の対象となった社員など約50人が、毎年全国から「QOL研修(クオリティ・オブ・ライフ)」を受けるために"入門"しているほか、新入社員研修や35歳研修などでも利用され、延べの入門者数は8900人を超える。
全国平均を下回る医療費
道場は2018年から、要望に応える形で一般開放も始めたところ、すぐに予約が埋まる状況が続いている。その特徴は、「健康力を目覚めさせる実践の場」として、入門者のQOLの向上を目的としているところだ。
道場長の佐藤雄彦氏(サンスター財団 健康推進室)は「過剰なストレス、不規則な生活、栄養バランスの偏りなどが生活習慣病を引き起こします。医療費を抑えるためにも早期に生活習慣を改善することが重要です」と指摘する。実際に、2泊3日のQOL研修を終えた社員の半数以上が、1年後の診断時には改善しているという。
同社は道場の運営費用には投資し、そのぶん医療費は抑えるという考え方。社員とその家族の医療費がすべての年代で全国平均を下回っているほか、45歳以上の年代では、全国平均のほぼ半分を実現している。
佐藤氏は、「"もうここには戻ってきたくない"という思いで、日常に戻っても必死で改善してくれているのかもしれない」と言う。研修は、ウォーキングやアクアビクスなどの有酸素運動や体幹トレーニングに加え、心の健康を手に入れるための座禅や生活習慣病の怖さを学ぶ講義もあり、かなりハードな内容となっているからだ。
道場のプログラムや方針は、グループ創業者2代目の金田博夫氏が体調をくずした際に「西式健康法」で回復したことから、これにならっている。食事はすべて玄米菜食(1日1200キロカロリー)で、風呂は自律神経の調整機能を高めるため、冷水と温水に交互に入る。睡眠時は硬くて平らな畳のベッドで硬い木枕を使い、頚椎と背骨の前後の歪みを整える。
佐藤氏は「最近はデスクワークやスマホの影響で首が歪んでいる人も多い。そんな人にこそ木枕を使ってほしいけれど、硬くて眠れないという人もいます」と苦笑い …