2017年に「健康経営優良法人(ホワイト500)」に選ばれるなど、ホールディングスの中で先頭に立って健康経営に取り組む田辺三菱製薬は、ICTを活用した健康サポートシステムで、健康情報の可視化・共有化を進める。
1678年の創業以来、医薬品の製造販売で長い歴史を持つ田辺三菱製薬(大阪・中央)。旧田辺製薬の時代から大規模事業所に看護職を配置し、拠点ごとの労働環境に合わせた健康管理を実施してきた。「当時は安全配慮義務の遵守を重要視した体制で、各拠点のトップに運用が任されており、健康保険組合と人事が別々に動いていました」と振り返るのは、当時から人事部に籍を置いていた、健康推進グループ主査の黒田和美氏だ。
その意識が変わったのは2013年ごろ。厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」調査において、精神障害の労災認定者が急増し始めた時期で、同社でもメンタルヘルス対策を強化する必要性を感じていた。そこで、健康関連データを人事配置などの就業管理にも活かしていけるよう、健康保険組合と人事部門との連携を意識した「健康管理運営体制」を構築した。
2016年にはグループ全体の健康方針が策定され、代表取締役社長の三津家正之氏はトップメッセージとして健康経営の考え方を発信。2017年4月には人事部に「健康推進グループ」が新設され、黒田氏のほか営業本部、研究本部など部門横断で8人(現在は9人)が所属することとなった。健康経営施策を実践する部隊として「3カ年卒煙プログラム」を始めたり、社員の健康データの"見える化"を促すツールとして「健康白書」を創刊したりした。
ICTで健康データを可視化
2017年は合併新会社となってから10周年の節目の年。そこで、周年記念プロジェクト「Decade-Milestone Project(DMP)」の一環として健康経営を大規模に推進することが決まった。9月には歩数、距離、消費カロリー、心拍数、睡眠の質などを記録できるウェアラブル活動量計「Fitbit」を社員の希望者に無料貸与。2018年8月現在のカバー率は80%となっている …