企業の社会的責任に関わる意思決定に疑念の声 不信感を払拭する危機管理広報とは
複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを98専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
リスク広報最前線
近年さらに複雑化する企業リスクに、広報はどう立ち向かうべきか。企業のリスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新の企業リスク事例を踏まえて解説する。
9月30日、日本歯科医師連盟(以下「日歯連」)の元会長、前会長、前副理事長の3人が、政治資金規正法違反の罪で逮捕されました。
元会長ら3人が逮捕された9月30日当日、日歯連は「状況を確認中なのでコメントを差し控える」とマスコミに回答しました。これは要するにマスコミにとって「ノーコメント」と同じ意味です。
企業が危機・不祥事を起こした際、マスコミの取材に対し「コメントを差し控える」「ノーコメント」との回答をしている例が散見されます。しかし、こうした回答は絶対に避けなければなりません。それはなぜでしょうか。
企業が危機・不祥事を起こした際、マスコミは当該企業に取材するにあたり、事前に取材や情報収集をしてから企業にコメントを求めます。目的は、記者が独自に取材をして収集した情報どおりの記事を、当該企業に書いてよいかどうかを最終確認するためです。
このときに企業が「コメントを差し控える」「ノーコメント」と回答すると、マスコミは「企業側の言い分がないのであれば、自分たちが取材したとおりに記事を書いてよいということだ」と解釈します。
もちろん、企業にとってみれば「マスコミの取材どおりに記事を書いて良い」と許したつもりはないかもしれません。しかし、企業が何も発信しない以上、マスコミは企業の言い分を書きようがありません。結果として、「どうぞ好きなように報じてください」と同じことになってしまっているのです。
日歯連は、元会長ら3人が逮捕された9月30日、日歯連の会員向けに「逮捕は青天のへきれき」との文書を配布しました。しかし、日歯連の元会長ら3人が逮捕されることになった理由は、政治資金規正法違反です。同一の理由で、4月30日に日歯連は東京地検特捜部に事務所を捜索されています。
また、捜索直後の5月2日には、日歯連内部で …