コロナ禍によって生活者の行動は大きく変化した。実際に、どういった変化があったのか、調査データをもとに著者が解説をしていく。
2020年1月16日、国内初となる新型コロナウイルスの感染者が確認。翌月2月13日には新型コロナを原因とする国内初の死者が確認されました。その後、感染者は日に日に増え、3月25日には全国で96人、東京では41人の新規感染者が確認され、小池都知事が「感染爆発 重大局面」と書かれたボードを掲げて会見を行いました。小池都知事の歯切れのよい発音で読み上げられたこの言葉によって、生活者の不安はいっきに高まったでしょう。
そしてさらに、3月29日にタレントの志村けんさんが新型コロナによって急死したとのニュースがメディアを駆け巡ったことで、新型コロナはよりリアリティのある「不安」として急速に全国に拡大していきました。
緩まない感染不安とお財布の紐
インテージでは、3月下旬から「新型コロナへの感染拡大不安」をはじめとして、「経済的な暮らし向きの変化」、「節約意識」といった消費につながる意識を、さらには、「外食」や「旅行」といった外出を伴う行動意向といったものをウェブアンケートで日々、計測・把握してきました。(※1)
第3波最中の直近のアンケート結果(執筆時2020年12月上旬)では、8割弱の方が「感染拡大」に不安を感じています。また、6割の方が「節約」を意識しており、2割の方が今後「暮らし向きが悪くなる」と回答しています。
感染拡大初期からの推移をみていると、これらの数字は感染者数の増減(縦棒グラフ)と連動して変化しており、第3波が猛威を振るう現在、「感染拡大不安」が再び大きく増加しています。また、新型コロナの長期化に伴い、経済や家計の先行きを危ぶみ「暮らし向きの悪化」を不安視し、「節約意識」も強まっています(図1)。
次に外食など外出を伴う行動について生活者が抱く不安を見ていきます。ここでは「飲食店での食事」「テーマパークや繁華街・人が集まる場所」「国内旅行」という3つをとりだしてみます。こちらも感染者数に連動して増減をしており、第3波により11月からアップトレンドに入りました。「Go toトラベル」「Go toイート」によって各業界への支援施策も動き出していましたが、再々拡大によって、外出を伴う行動も不安に大きく覆われている状況です(図2)。
今後も有効なワクチンの普及や効果的な治療法の確立、医療体制の充実などが進まないかぎり、生活者の「不安」は感染者数の変化に呼応して増減を繰り返すと考えられます。
一方で「暮らしの先行き」「節約意識」といった消費意識は、経済の回復なくしては戻ることはないと考えられます。12月に経済協力開発機構(OECD)が経済予測を公表しましたが、日本のGDPは20年が5.3%減少、21年に2.3%、22年に1.5%の増加としており、中国やアメリカなどと比較すると苦戦が予想されています。
ウイルスは「みえない不安」です。さらには経済の回復も「みえない不安」です。先の見通しが立たない以上、「不安」が緩むこともなさそうです。そして、「緩まぬ不安」とともに生活者の「お財布の紐」が緩むのも当分先になりそうです。
生活者の買い物行動の変化
新型コロナ感染拡大をはじめとした「不安」は、生活者の買い物行動にどのようなインパクトを与えているか。当社が全国5万人の消費者パネルから収集している購買履歴データ(※2)から確認していきます。
最も大きなインパクトは「まとめ買いシフト」です。一斉休校が始まった3月中旬から緊急事態宣言が発令された4月中旬のタイミングで、スーパーやコンビニなどの「1回あたりの買い物金額」が急上昇しました。スーパーについては、普段、買い物をする人が外出機会を減らしてまとめ買いをしたということが要因と推測されます。また、一斉休校に加えて、この頃から多くの企業が在宅勤務やリモートワークに変化したことによって、家中での食事(内食)が増えたことから食材などの購入が増えたこともその要因と考えられます(図3)。
スーパーをはじめとした...